学校長挨拶

学校長挨拶2026年4月1日

Let's write your learning story at Nagata High School


兵庫県立長田高等学校のホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。

本校は、大正10年(1921年)に兵庫県立神戸第三中学校として創立し、以来「神撫教育」を理念に掲げ106年目を迎えました。これまでに多くの優秀な人材を世に輩出し、卒業生は経済、学芸、政治など各界で広く活躍されています。
 生徒たちは、教科の学習はもとより、部活動や探究活動、学校行事、海外研修など、自らの個性や意欲を生かしながら、多様な教育活動に全力で取り組んでいます。各種の科学や文化的なコンテスト、海外短期留学にも積極的に挑戦し、その中で自らの可能性を試し、伸ばしながら、充実した高校生活を送っています。
 また、本校では服装や髪型など学校生活のルールを基本的に「自由」としています。この自由を主体的に受け止め、自ら考え、判断し、行動する姿勢こそが長田生の特長です。自律と責任を伴った自由のもとで、生徒たちはのびのびと学校生活を楽しみ、大きく成長しています。


1 神撫(しんぶ)教育

初代校長近藤英也先生が掲げられた3つの教育方針

  • (一)「智・徳・体」の調和・統一した全人教育
  • (二)一芸一才つまり個性を伸ばす教育
  • (三)自己教育力を養う教育

を受け継ぎ、文武両道の公立高校として躍動し、地域社会から信頼される学校をめざします。

2 スクール・ミッション

自他を尊重する豊かな人間性とともに、創造的な探究力と多様な個性を活かす包括的な指導力を備え、主体的に未来を切り拓く、高い志を持ったグローバルリーダーを育成します。

3 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」(文部科学省指定)

科学的データや理論に基づいて課題を分析する力(数理科学的思考力)と、国際社会で実践的に活用できる語学力(グローバル・コミュニケーション力)を基盤として、科学技術、医療、人文社会等の各分野において新たな価値や解決策を構想し、提案・発信・実践できる、グローバル人材の礎を育成します。

生徒一人一人が、自らの目指す未来に挑戦できる高校であり続けるため、創立以来受け継いできた全人教育と、新たな価値を創出する探究活動を両輪として、本年度も「自然体の長田高校」を着実に推進してまいります。
 温かいご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

兵庫県立長田高等学校
校長 藤原 生也

1学期始業式 校長式辞(要約)2026年4月8日

 令和8年度がいよいよスタートしました。本日は第81回生の入学式を迎えます。校門の桜が満開の中で新年度をスタートでき、嬉しく思っています。皆さんは一つ学年が上がり、それぞれにとって新しい一年の始まりです。私自身も長田高校の校長として三年目の春を迎え、「今年も新しい一年が始まる」と改めて気持ちを引き締めているところです。皆さんの活気ある姿に力をもらいながら、充実した一年にしたいと思っています。今年も一緒に頑張りましょう。よろしくお願いします。

 さて、現代社会では、身近な出来事と世界の動きが密接に関わっています。例えば、令和8年4月1日施行の改正道路交通法により、16歳以上の自転車利用者には交通違反に対する反則金制度が適用されることとなりました。スマートフォンの操作やイヤホン使用など、日常的に見られる行為が重大な事故につながる可能性があることを踏まえた制度です。また、中東情勢の緊張は遠い地域の出来事のようでありながら、エネルギー価格や物価の上昇を通じて私たちの生活にも影響を及ぼします。こうした社会の動きを「自分事」として捉え、関心を持つ姿勢は、長田生にとって非常に大切だと思っています。

 不安な話題が多い中で、高校生による注目すべき成果が報じられました。宇宙には明るさが変化する「変光星」があり、その観測は宇宙の仕組み解明に重要とされています。アメリカ航空宇宙局(NASA)は2009年に赤外線宇宙望遠鏡WISEを打ち上げ、約10年間にわたり観測を行い、約2000億行に及ぶ膨大なデータを蓄積しました。しかし、その量の多さから解析が進まず、多くの発見が埋もれた状態にありました。こうした中、ある高校生がAIを用いたデータ解析プログラムを自ら開発し、未発見だった変光星を150万個以上発見しました。この成果は論文として発表され、世界的な注目を集めています。彼はカリフォルニア工科大学のインターンシップに参加し、手作業による解析の課題に直面したことを契機に、作業の自動化に取り組みました。
 重要なのは、その成果を成し遂げたのが、特別な研究者ではなく、皆さんと同じ「高校生」であるということです。彼が、与えられた機会に主体的に挑戦し、自ら課題を解決したことが、この成果につながったといえます。与えられた機会を生かし、自ら行動することの大切さを示しています。

 皆さんも、今年も、たくさんのことを学び、たくさんのことに挑戦すると思います。特別なイベント参加に限らず、本校においても、日々の授業や部活動、学校行事、SSH事業や課題研究・・・、3年生にとっては受験も「挑戦」です。それぞれが、自らやりたいこと、そしてやるべきことに真摯に向き合い、徹底して取り組む中で、自分なりの確かな成果をつかんでほしいと思います。

 3年生にとっては進路実現に向けた重要な一年となりますが、これまでの経験から、最後まで部活動や行事に全力で取り組んだ生徒ほど、その後の成長が著しいことが分かっています。この1学期は、今なすべきことに真摯に向き合い、一つひとつを、しっかりやり切ってください。

 最後に、ニュージーランドからの留学生を紹介します。温かいサポートをお願いします。

 今年も皆さんに大きな期待をしています。それぞれが、それぞれの挑戦をしてくれることをお願いして、1学期の始業式の式辞とします。

令和8年度 第81回入学式 式辞2026年4月8日

春の息吹が感じられるこの佳き日、校門の桜は満開を迎え、やわらかな春の光の中で美しく咲き誇っています。新緑も芽吹き始め、生命の輝きに満ちた季節となりました。
 本日ここに、兵庫県立長田高等学校第81回入学式を挙行できますことは、この上ない慶びであります。ご臨席いただきましたご来賓並びに保護者の皆様に対し、高い所からではございますが、心より御礼申し上げます。
 ただ今、入学を許可しました320名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。本校教職員、在校生を挙げて、皆さんの入学を心より歓迎いたします。

 本校は大正10年4月、県立第三神戸中学校として創立され、本年度で106年の歴史を刻みます。これまでに多くの優秀な人材を社会へ送り出し、経済、学術、文化、行政など各分野において広く活躍されております。その歩みの中で、本校は地域社会からの信頼を得るとともに、「兵庫県に長田高校あり」と評される存在となってまいりました。
 とりわけ近年は、国指定のスーパーサイエンスハイスクール事業をはじめ、探究活動や国際交流などの教育活動を一層充実させ、国内外で活躍するために必要な、課題解決能力の育成に取り組んでおります。その成果は、学習面・課外活動の両面において着実に現れております。
また、本校は自由闊達な校風を誇りとし、その魅力を内外に発信していますが、この「自由」を主体的に受け止め、自ら考え、判断し、行動する姿勢こそが長田生の真価です。自律と責任を伴う自由のもとで、生徒たちはのびのびと学校生活を楽しみながら、着実に成長を遂げています。
 新入生の皆さんには、自分を自分らしく表現できる本校に入学した価値を胸に刻み、この「自然体」の校風を継承するだけでなく、さらに発展させ、自らが長田高校の新たな歴史を築いていくのだという気概をもって学校生活に臨んでほしいと願っています。

 さて、本校教育の根幹である「神撫教育」は、本校初代校長 近藤英也先生が、本校の地名「神撫台」にちなみ示された教育指針です。皆さんに配付した『開門の章』に記されている通り、その要点は次の三つに集約されます。
 一つ、「智・徳・体」のいずれにも偏ることなく、調和・統一して発達を目指すこと。
 一つ、すべての人が持つ一芸一才すなわち個性を見いだし、これを伸ばすこと。
 一つ、「学ぶ」ことを通して、人間としての在り方を自ら問い続けること。
これらに共通するのは、「長田高校でいかに学ぶか」という姿勢にほかなりません。

 そこで、入学にあたり、皆さんに一つの言葉を紹介します。
 それは、「幸運は準備された心に宿る」という言葉です。これはフランスの科学者ルイ・パスツールの言葉ですが、昨年ノーベル化学賞を受賞された北川進さんも、受賞記念の講演の中でこの言葉を引用し、自らの経験と重ねて語られました。
 北川さんは、研究者としての多くの出会いや発見は決して単なる偶然ではなく、日々の努力によって培われた「準備された心」が引き寄せたものだと語られ、強調されました。この言葉は、皆さんのこれからの高校生活を考えるうえで、大切な示唆を与えてくれます。
 高校生活は、単に知識を身につける場ではありません。自ら問いを立て、考え、挑戦し、自分自身の可能性を広げていく三年間です。その中で出会う学び、友人、さまざまな 機会は、決して偶然に与えられるものではありませんし、ただ待っていて与えられるものでもありません。日々の姿勢によって、その価値が大きく変わっていきます。
 授業に臨むとき、ただ受け身でいるのか、それとも「なぜだろう」と問いを持って向き合うのか。
 課題に取り組むとき、与えられた範囲で終わるのか、それとも自ら広げていくのか。
 その一つひとつの選択の積み重ねが、やがて皆さんの力となり、未来の可能性を大きく左右します。
 本校が何より大切にしているのは、「主体的に学ぶ姿勢」です。どうか皆さん、この長田高校での三年間を、「準備された心」を育むかけがえのない時間として大切にしてください。主体的に学びへと向き合い、目の前の機会に誠実に取り組み、多様な人々との出会いを重ねながら、失敗を恐れず挑戦を続けてほしいと思います。そうした一つひとつの経験の積み重ねが、やがて皆さん自身の未来を切り拓き、好機を引き寄せる確かな力となります。
 幸運は準備された心に宿る。「長田高校での積み重ねがあったからこそ、今の自分がある」と、胸を張って語ることのできる、充実した高校生活を築いてください。

 最後になりましたが、保護者の皆様に一言ご挨拶申し上げます。本日はお子様のご入学おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。高校三年間は、人生の方向を大きく左右する重要な時期であると同時に、悩みや葛藤を経験する時期でもあります。本校教職員は、お子様が自らの力で進むべき道を切り拓いていけるよう、全力で支援してまいります。どうか本校の教育方針に深いご理解とご協力、そしてご信頼を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 それでは新入生の皆さん。ここには、ともに高みを目指す仲間が集っています。これからの歩みの中で、自分の力にふがいなさを感じ、悩むこともあるでしょう。しかし、自分と他者をいたずらに比較して心を曇らせる必要はありません。人にはそれぞれの個性があり、歩む速さが異なるからこそ、それぞれにふさわしい形で花開くものです。どうか、この恵まれた環境に身を置いていることの意味と喜びを大切にし、志を同じくする仲間とともに、学習に、探究に、そして部活動に、持てる力を存分に発揮してください。皆さんにとって、本校での三年間が、実り多く、かけがえのない青春の日々となることを心より願い、式辞といたします。


兵庫県立長田高等学校
校長 藤原 生也

創立記念日に寄せて2026年4月14日

4月16日は本校の創立記念日にあたります。
 「創立記念日」とは学校の原点の日ですから、初心を思い出す意味でも意義深いものだと思います。

 本校は大正9年に設立が認可され、大正10年に開校した兵庫県立第三神戸中学校がその前身です。その頃、のちの神戸高校、兵庫高校となる第一神戸中学校、第二神戸中学校が既に開校されていましたが、中学校への志願者が多く、県民の要望を受ける形で第三神戸中学校が新設されることとなりました。この大正9年は1920年ですから、今年は創立106年目にあたることになります。

 第三神戸中学校の校舎は、現在地と同じ場所にありました。
 本校の所在地は池田谷町です。この地域はかつて水田が多く、灌漑用のため池も数多く存在していました。実は、現在の学校の敷地も、そうしたため池を埋め立てて整備されたものだと伝えられています。グランドは、昭和36年に現在の神撫台グランドができるまでは、今の西代中学校の場所にあったそうです。
 神撫台グランドといえば、本校の伝統である「周回走」です。この周回走が始まったのは、今からおよそ50年以上前、昭和45年頃のことです。当時は学生運動の影響で授業が思うように行えない時期があり、体育の授業も十分に実施できない状況でした。そのような中で、当時の生徒たちが「授業をしてほしい。それが難しいのであれば、せめて走らせてほしい」と先生方に申し出たことがきっかけとなり、周回走が始まったと伝えられています。つまり、この周回走は、生徒自身の主体的な要望から生まれた伝統なのです。
 皆さんの中には周回走が苦手と思っている人がいるかもしれません。しかし、卒業生の方々は、「生徒であった当時は辛かったものの、卒業すれば回生が異なっても共通の話題となる。」、「周回走によって体力が培われ、それで大学受験でも力を発揮することができた。」、「走っている時は辛いかもしれないが、必ず心身ともに強くなって、将来の糧になる。」と皆さんにエールを送っておられます。自分自身の未来のために、前向きに取り組んで欲しいと思います。

 その後、戦後の学制改革により、「長田高等学校」へと校名が変更されたのは昭和23年のことです。以来、先輩たちは、神戸三中の伝統を踏まえつつ、高校生の本分を全うしてこられ、今では文武両道の公立高校として、県内はもちろん、全国的に評価されるところとなっています。

 校門を入ったところには、本校初代校長・近藤英也先生の胸像があり、今も変わらず皆さんを見守っておられます。その近藤先生が示された本校の教育の根幹が、「神撫教育」です。近藤先生は、創立10周年記念式典において、「開門の章」を通して、この神撫教育の理念を明確に示されました。神撫教育は本校教育の根幹であり、100年近く本校の教職員、生徒によって受け継がれてきました。その教育理念の3本の柱は次のとおりです。

  • 一つ、「智・徳・体」の調和的発達を目指すこと
  • 一つ、一芸一才、つまりそれぞれの生徒が己の個性を見いだし、その才を伸ばすこと
  • 一つ、学ぶことによって「人間としてどう生きるか」を自分で考える、すなわち自己教育力を養うこと
 創立当時は男子校でした。開校の日、近藤先生は「本校の教育は、立派な人格を備えた紳士を育成することを目的とするものであり、上級学校への進学準備だけでその役割を終えるものではない。」と述べられたと伝えられています。
 この言葉には、学力だけでなく、人としての在り方を大切にするという、本校の教育の原点が込められています。
 現在、様々なことが大きく、そして急速に変化している時代です。変化に適応する力はもちろん重要です。しかし同時に、その変動に流されず、自分自身をしっかりと見つめながら、為すべきことを実行していくため、皆さんの根本に近藤先生がおっしゃっている、「智・徳・体」のバランスをもった人に育って欲しい、「自己教育力」すなわち常に学び続けて、自分を成長させる人となって欲しいと私は願っています。

 最後に、資料によれば、「大正11年4月17日、創立記念登山として摩耶山に登る」との記録があります。開校当初から、本校にとって登山は欠かすことのできない伝統であることがうかがえます。六甲山縦走が、長田高校で結ばれた仲間との絆をさらに深め、思い出に残る登山となることを願っています。

 本日は、4月16日に創立記念日を迎えるにあたり、在校生の皆さんに本校の歴史の一端を通して、本校生としての誇りを持ってもらいたいと願い、お話しました。新入生も、そして先輩となった2・3年生も、伝統ある長田高校のかけがえのない一員として、神撫教育の理念と自由闊達な校風を大切にしながら、次の世代へとしっかりと引き継いでいってくれることを、大いに期待しています。

 以上で、創立記念日に寄せた講話とします。

1学期終業式式辞2026年7月17日

暑さ指数(WBGT)が連日30以上の「危険/厳重警戒」予測が発令されていますが、みなさんはいつも元気ですね。明日からの夏休みが皆さんにとっての「夏本番」でしょう。この1学期はどうだったでしょうか。
 今日は3つのことを伝えたいと思います。

  • (1) “詰め”を大切に。
  •  先日行われた2,3年生のコーラス大会は大変楽しかったです。特に3年生は全クラスが本格的合唱曲に挑戦し、皆さんの成長と頑張りには感激しました。各クラスの順位は本当に「僅差」でした。きっと、あともう少しの“詰めの甘さ”を後悔した人もいたのではないでしょうか。もう少しできたはず――。あとで後悔しないよう、何事にも計画的かつ諦めず、最後まで細部にこだわる姿勢は大切です。
     2年生は、球技大会の開会式で盛り上がっていましたね。コーラスも来年に期待しています。

  • (2) 『いい子』もいいけど、『いい個』になりましょう。
  •  教育実習生の一人が2年生の通信に印象的な言葉を書いてくれていましたので、このことについて少し考えて欲しいと思います。
     皆さんは、先生や周囲の期待に応え、失敗をせず、みんなと同じように行動できる『いい子』でありたいと思っている人が多いかもしれません。周りを見渡すと、長田高校の生徒は皆そう見えるかもしれません。しかし実際には、多くの人がそうでない自分に、葛藤や劣等感を抱えながら毎日を過ごしているのではないですか。実は、私自身私もそんな劣等感を抱えた高校生でした。
     だからこそ、『いい子』になろうと無理をするより、『いい個』を目指してはどうでしょうか。
     『いい個』とは、他人と比較せず自分を認め、自分らしさを大切にし、自分の考えを持ちながら、同時に他者の個性も尊重し自己の改善(個性・才能を伸ばす)に努めることができる人だと思います。
     部活動や探究活動では、意見が対立することもあるでしょう。しかし、そのような場面だからこそ、自分の考えをしっかり持ち、伝えるべきことは誠実に伝え、相手の意見にも耳を傾けながら修正し、集団をより良い方向へと磨いていってほしいと思います。
     『いい子=良き社会人』という意味では『いい子』をめざすことは必要です。しかし、周りに合わせるだけでは、新しい自分は生まれません。長田生はみんな『いい個』すなわち個性と才能を持っています。『いい個』であることを目指して欲しいと思います。

  • (3) 3つ目は「進路」についてです。今日は暑いので、先日配付された『令和8年(2026)年度 進路の手引き』巻頭言を必ず読んでください。


  •  では、9月1日の2学期始業式に皆さんの充実した顔を見ることを期待して、終業式の式辞とします。

    『令和8年(2026)年度 進路の手引き』巻頭言から(少し修正)

    -人生の「最適解」を探し続ける-

     3年生にとって、この夏は「受験の天王山!」とよく言われます。1,2年生も、夏の面談では、必ず進路について担任と話をすると思います。
     皆さんは、自分自身の『進路』を切り拓くという大きな目標に向かって、高校三年間という限られた時間を有効に使いながら、勉強や部活に励んでいます。『進路』と聞くと、多くの人は大学や学部、職業を選ぶことを思い浮かべるかもしれません。私は、『進路』選択とは進学先や就職先を決めることにとどまらず、「自分はどのように生きていきたいのか」を考え、その実現に向けて道を選ぶことだと思っています。
     皆さんが生きる社会は、これまで以上に変化の激しい時代です。人工知能の発展や技術革新によって、仕事の内容も社会の仕組みも大きく変わり続けています。学習院大学の滝澤美帆教授は、「機械など有形資産の陳腐化が進むスピードは年10%ほどだが、人的資本の価値は年40%のペースで失われるとされる。」と述べています(日本経済新聞記事「職場外の教育・訓練必要」2022年7月21日朝刊)。また、2025年の新入社員を対象とした「今の会社で何年働く?」という調査によると、「定年まで働く」と答えた人は22.4%に対して「3年以内」「4・5年」と答えた人はそれぞれ21.1%、18.5%であったそうです(マイナビ転職キャリアトレンド研究所「新入社員の意識調査2025」)。「人生100年時代」に入りつつあるなかで、学び直しや転職、新たな挑戦を重ねながら、自分らしい人生を築いていく「マルチステージ」と呼ばれる時代がすでに始まっています。
     こうした時代においては、皆さんの世代には、職業人として常に自らをアップデートし続ける力が求められます。『進路』の「最適解」を探す過程においても、一度の選択で終わるのではなく、変化する社会や新たな課題に柔軟に適応しながら学び続け、自らの可能性を広げていくことが必要となるのです。
     では、このような時代に、自分自身の生きる道に対する「最適解」を見つけるために大切なことは何でしょうか。私は、その鍵は三つあると思います。
     一つ目は、「好き」という気持ちです。何に心が動くのか、何をもっと知りたいと思うのかを大切にしてください。
     二つ目は、「挑戦」です。可能かどうか、やってみなければ分からないことはたくさんあります。失敗を恐れず、一歩を踏み出してください。
     三つ目は、「対話」です。友人や先生、保護者、先輩など、多様な人との対話を通して、自分では気付かなかった可能性が見えてきます。講演会や探究活動などで研究者や専門家と出会う機会もぜひ積極的に生かしてください。
     時代が変わり、AIが発達しても、「もっと知りたい」「もっと深めたい」「挑戦したい」という思いは、人間にしか持てない大切な原動力です。その思いに素直に向き合いながら選んだ道は、必ず自分自身の納得につながるでしょう。そして、十分に納得が得られないときは、他者から得る多角的な視点も生かしながら、さらに答えを探すのが人生です。その過程で何を学び、次にどう生かすかによって、人はさらに成長することができます。『論語』に次のような一節があります。 「子曰、学如不及、猶恐失之(子曰わく、学は及ばざるが如くするも、猶之を失わんことを恐る)」
     学びに終わりはないという謙虚な姿勢で常に向上を目指し、身に付けた知識や経験を自らの力として磨き続けることの大切さを説いた言葉です。
    長田高校での三年間が、進学先を決めるためだけではなく、生涯にわたって学び続け、自分の人生を自分で切り拓いていく力を育む時間となることを願っています。

2学期始業式式辞2026年9月1日

※始業式で話せなかった内容を、講話内容の最後に掲載しています。皆さんに読んでもらえると嬉しいです。

 今年も猛暑であったが、元気で過ごすことが出来ましたか?
 全国・海外で地震・大雨・洪水・土石流による被害がと続きましたが、こうやって2学期始業式が出来ることを嬉しく思います。
 皆さんは夏季休業中に様々な体験をしたと思います。部活動、探究活動、SSH、大学訪問、海外研修、旅行・・・など。私も色々と体験しました。

  • ・SSHの全国生徒発表会での3年生グループの活躍(入賞まで惜しかった)
  • ・吹奏楽部のコンクール県大会での迫力ある演奏(他校の演奏より感激した)
  • ・東京大学の東京研修での出会い(本校OBの活躍はすごい)
  • ・空手道の全国インターハイで開会宣言(本校の空手道部員が補助員として頑張った)
  • など。
 放送委員会と音楽部は甲子園の高校野球開会式でアナウンスや歌を担当してくれましたし、最近はテレビで「熱闘JAM2026」と言う音楽フェスのコマーシャルに長田高校吹奏楽部の名前が流れています。様々な場面で、長田高校の名前を広めてくれて嬉しいかぎりです。
 ここまで「体験」について話してきました。
 「体験」とよく似た言葉に、「経験」があります。皆さんは、「体験」と「経験」の違いを考えたことがありますか。私は、こう考えています。 「体験」は、自分に起きたこと。
「経験」は、その体験から学び、自分の中に残ったものです。

 例えば、授業を受けた。実験をした。講演を聞いた。修学旅行に行った。大会に出た。大学を訪問した。研究発表をした。
これらはすべて「体験」です。
しかし、その後に、
 「自分は何を感じたのか」
 「何に気づいたのか」
 「なぜうまくいかなかったのか」
 「次はどうしたいのか」
と考え、その体験によって自分の
考え方や行動が変わったとき、体験は「経験」になる、つまり、体験は、しただけでは経験にはならない、体験を振り返り、そこに自分なりの意味を見いだすことで、初めて経験になるのだと思います。
 例えば、テストで思うような点数が取れなかったとします。「点数が悪かった」で終われば、それは一つの体験です。
しかし、
 「なぜ間違えたのだろう」
 「公式の意味を本当に理解していたのだろうか」
 「問題集を解いて、分かったつもりになっていなかったか」
 「次はどう勉強すればよいだろう」
と考える。
さらに、間違えた理由を書いてみる。友人や先生に説明してみる。別の解法について話してみる。
すると、
 「自分は理解したつもりになっていた」
ということに気づくかもしれません。
そして、次から解き直しをする、説明できるところまで理解する、と行動を変える。
ここまで進んだとき、その失敗は単なる体験ではなく、自分を成長させる「経験」になったと言えるでしょう。

 では、体験を経験に変えるためには、どうすればよいのでしょうか。一つの方法が、アウトプットすることです。
 アウトプットというと、発表することを思い浮かべるかもしれません。しかし、それだけではありません。
  • ・友人や家族に話す。
  • ・ノートや日記に書く。
  • ・誰かに説明する。
  • ・質問する。
  • ・友人と議論する。
  • ・図やグラフにする。
  • ・作品や研究成果としてまとめる。
  • ・後輩に教える。
そして、最も大切なのは、
  • ・次の行動を変えることです。
探究活動も同じです。
  • ・実験をした。
  • ・データを集めた。

ここで終われば体験です。
しかし、データを整理し、グラフにし、自分たちなりに考察する。人に説明する。質問を受ける。
そこで、
 「このデータだけでは言い切れない」
 「別の条件でも調べる必要がある」
と気づき、もう一度検証する。
この一連の過程が、自分の中に「経験」として残っていきます。
2年生で取り組む「課題研究」ではこのことを経験してもらっています。

 「経験」について語りましたが、実は、今日の話で“一番伝えたいこと”はここからです。
それは、“「体験」を「経験」に昇華させること”を「意識」して行うことが重要だということです。
それはなぜか?について続けます。

 第一に、「分かったつもり」を防ぐからです。
何かを見たり聞いたりした直後には、「分かった」と感じます。しかし、誰かに説明しようとすると、
 「なぜそうなるのか説明できない」
 「この部分が曖昧だ」
 「実は意味を理解していなかった」
ということに気づきます。
つまり、アウトプットは自分の理解を確認する作業でもあります。
「分かった」ことと「説明できる」ことには差があります。
体験を経験に高めようと考えれば、自然に「自分の言葉で説明してみよう」という行動につながります。

 第二に、既に知っていることと新しい体験を結び付けることが出来るからです。
理解が深まるとは、知識が単純に増えることだけではありません。
たとえば阪神・淡路大震災について授業で学んでいた生徒が、実際に被災者の話を聞いたとします。
 「話を聞いた」で終われば体験です。
しかし、
「授業で学んだ避難所の課題と、この方の話はどうつながるのだろう」
と考えると、知識と体験が結び付きます。
すると、それまで教科書の中にあった知識が、自分の中で意味を持つようになります。
これが「深い理解」です。

 第三に、「なぜ?」を生むからです。
体験を経験にしようと意識して
 「私は何を学んだのだろう」
と考えます。 すると、  「なぜこうなったのか」
 「他の場合はどうなのか」
 「本当にそう言い切れるのか」
という新しい問いが生まれます。
つまり、
体験が問いを生み、問いが理解を深めるのです。

 第四に、他者へのアウトプットによって自分にはなかった視点を入れることが出来るからです。
「自分はこう考えた」と意識して話してみる。
すると友人から、
 「でも、こういう見方もあるのでは?」
と言われる。
そこで、
 「確かにそうだ」
と意識して考え直す。
この瞬間、自分一人では到達できなかった理解に進んでいます。
友人や先生との対話や質問、振り返りを通して「新たな意味や理解の深まり」につなげることになります。

 そして第五に、最も重要なのが、次の場面で使える知識にすることです。
本当に理解したことは、その場だけで終わりません。
  • ・数学で学んだ考え方を物理で使う。
  • ・探究活動で身につけたデータ分析を社会問題の分析に使う。
  • ・部活動で学んだチームづくりを学校行事で使う。
このように、ある場面で学んだことを別の場面に応用することを、意識しておくことで理解は本物に近づきます。

まとめると、体験するだけでは、まだ学びは完成していない。
 体験 → アウトプット → 意味づけ → 経験 → 深い理解 → 次の行動
 「理解を深める」とは、「知ったことが増える」ことではなく、「意識して行うことで、体験したことの意味やつながりが見えるようになること」だと考えます。

 2学期は様々な面で実力を付ける期間です。
3年生は今日の話を勉強に生かして欲しいと思います。
また、2年生、1年生は勉強方法に加えて、探究活動や課題研究、部活動の新チームの活動などで生かして欲しいと思います。

 最後に、私はいつも同じことを言いますが、「やりたいこと」や「やるべきこと」に積極的に挑戦して欲しいと思います。
 「経験」を積むには、まず「体験」が必要です。そしてその機会を「体験」で終わらせず「経験」に換えて、成果に繫げて欲しいと思います。
 以上で2学期始業式に当たっての話とします。2学期も充実した生活を送ってください。


<おまけ>以下は、時間の都合で省略しました。

(1)私の体験を2点、少し詳しく紹介します。
 ○ 東京大学では本校のOBお二人から世界で活躍されている経験をお話いただき、理学博士で総長特任補佐の有馬教授から物質についてのお話しを通して、研究の楽しみかたや観察・実験の大切さを教えていただきました。研究者として、研究過程では結果が外れて同然で、実は失敗からの方が経験や新しい法則に繋がるというお話しが、頭に残っています。
 特に印象深かったのは本校57回生のゾロタリョワ・クセニアさん(女性)のお話しでした。ソビエト連邦の崩壊で7歳の時に来日、伊川谷で中学校生活を送り長田高校に入学。長田高校で充実した高校生活を送り、ロシア大学に入学。卒業後に日本の商社に入社され、海外で仕事をされた。結婚・出産を経験しながら会社の起業に関わる傍ら大学院で学ばれた。現在は東京大学教育学部博士課程で勉強されながら、会社代表や大学講師として活躍されている。氏のバイタリティー溢れる経験や学びについて、長田高校に来て、生徒たちに話を聞かせて欲しいとお願いしてきました。

 ○ 関西学院大学の理工学部で情報工学・AIを教えておられる巳波教授とお話し刷る機会を持てました。長田高校でもAIを活用した他校に真似のできない先進的な研修や勉強法が出来ないか、などについて一緒に考えてもらいました。非常に勉強になったと同時に、知らないお話もたくさん聞けてワクワクしました。

(2)夏季休業中に様々な話題があったが、気になったニュースはありますか?私が気になったニュースを4つ紹介します。

私が気になったニュースを4つ。
① 災害に関する出来事、ニュースが8月に集中した。

  • ・熊本地震
  • ・千葉、石川県能登の豪雨被害
  • ・中国・ネパールの国境で起きた土石流(AI画像かと思った)
  • ・政府の地震調査研究推進本部
     「阪神・淡路」断層M7.8「最大7%」30年以内の地震発生率Sランク、近畿全体で30年以内にM6.8級の地震50~60%と推計
② 18歳未満のSNS利用制限が加速
  • ・フェイスブックやインスタグラムを展開するアメリカの企業「メタ」が18歳未満のSNS利用時間を2時間に制限すると発表
  • ・若者に依存などの影響を与えたと州が訴訟し、52の州が制限で和解した。
  • ・日本では性的な画像や動画を送らせて、拡散するとの脅しや金品の要求をされる犯罪「セクストーション」日本で2022年頃から被害が急増し、特に10代男性の相談が増えている。
     気になることがあればすぐ相談を。SNSで繋がった友達を安易に信用してはいけない。
③ インフルエンザ、東京などで8月中に流行期に入っている。
  • ・東京では去年より1ヶ月以上早い。
  • ・季節が冬に当たる南半球からの観光客が原因ではないかとされている。
  • ・2学期の学校再開が増加促進の要因になる可能性あり。自身に風邪症状の兆しがあればマスクで拡散を防ぐこと。
  • ・2学期は体育祭、修学旅行、3年生は勉強の加速の妨げにならないように。
④ 一番目を引いたのは「新入社員初任給100万円-突出した能力10人内定」「AI時代 探究型人材を活用」
  • ・長田生にはチャンス!?
  • ・2年生の課題研究やSSH事業を通して尖った人材を目指して欲しい。

(おまけは以上です)