2学期始業式式辞2026年9月1日
※始業式で話せなかった内容を、講話内容の最後に掲載しています。皆さんに読んでもらえると嬉しいです。
今年も猛暑であったが、元気で過ごすことが出来ましたか?
全国・海外で地震・大雨・洪水・土石流による被害がと続きましたが、こうやって2学期始業式が出来ることを嬉しく思います。
皆さんは夏季休業中に様々な体験をしたと思います。部活動、探究活動、SSH、大学訪問、海外研修、旅行・・・など。私も色々と体験しました。
- ・SSHの全国生徒発表会での3年生グループの活躍(入賞まで惜しかった)
- ・吹奏楽部のコンクール県大会での迫力ある演奏(他校の演奏より感激した)
- ・東京大学の東京研修での出会い(本校OBの活躍はすごい)
- ・空手道の全国インターハイで開会宣言(本校の空手道部員が補助員として頑張った)
など。
放送委員会と音楽部は甲子園の高校野球開会式でアナウンスや歌を担当してくれましたし、最近はテレビで「熱闘JAM2026」と言う音楽フェスのコマーシャルに長田高校吹奏楽部の名前が流れています。様々な場面で、長田高校の名前を広めてくれて嬉しいかぎりです。
ここまで「体験」について話してきました。
「体験」とよく似た言葉に、「経験」があります。皆さんは、「体験」と「経験」の違いを考えたことがありますか。私は、こう考えています。
「体験」は、自分に起きたこと。
「経験」は、その体験から学び、自分の中に残ったものです。
例えば、授業を受けた。実験をした。講演を聞いた。修学旅行に行った。大会に出た。大学を訪問した。研究発表をした。
これらはすべて「体験」です。
しかし、その後に、
「自分は何を感じたのか」
「何に気づいたのか」
「なぜうまくいかなかったのか」
「次はどうしたいのか」
と考え、その体験によって自分の
考え方や行動が変わったとき、体験は「経験」になる、つまり、体験は、しただけでは経験にはならない、体験を振り返り、そこに自分なりの意味を見いだすことで、初めて経験になるのだと思います。
例えば、テストで思うような点数が取れなかったとします。「点数が悪かった」で終われば、それは一つの体験です。
しかし、
「なぜ間違えたのだろう」
「公式の意味を本当に理解していたのだろうか」
「問題集を解いて、分かったつもりになっていなかったか」
「次はどう勉強すればよいだろう」
と考える。
さらに、間違えた理由を書いてみる。友人や先生に説明してみる。別の解法について話してみる。
すると、
「自分は理解したつもりになっていた」
ということに気づくかもしれません。
そして、次から解き直しをする、説明できるところまで理解する、と行動を変える。
ここまで進んだとき、その失敗は単なる体験ではなく、自分を成長させる「経験」になったと言えるでしょう。
では、体験を経験に変えるためには、どうすればよいのでしょうか。一つの方法が、アウトプットすることです。
アウトプットというと、発表することを思い浮かべるかもしれません。しかし、それだけではありません。
- ・友人や家族に話す。
- ・ノートや日記に書く。
- ・誰かに説明する。
- ・質問する。
- ・友人と議論する。
- ・図やグラフにする。
- ・作品や研究成果としてまとめる。
- ・後輩に教える。
そして、最も大切なのは、
探究活動も同じです。
ここで終われば体験です。
しかし、データを整理し、グラフにし、自分たちなりに考察する。人に説明する。質問を受ける。
そこで、
「このデータだけでは言い切れない」
「別の条件でも調べる必要がある」
と気づき、もう一度検証する。
この一連の過程が、自分の中に「経験」として残っていきます。
2年生で取り組む「課題研究」ではこのことを経験してもらっています。
「経験」について語りましたが、実は、今日の話で“一番伝えたいこと”はここからです。
それは、“「体験」を「経験」に昇華させること”を「意識」して行うことが重要だということです。
それはなぜか?について続けます。
第一に、「分かったつもり」を防ぐからです。
何かを見たり聞いたりした直後には、「分かった」と感じます。しかし、誰かに説明しようとすると、
「なぜそうなるのか説明できない」
「この部分が曖昧だ」
「実は意味を理解していなかった」
ということに気づきます。
つまり、アウトプットは自分の理解を確認する作業でもあります。
「分かった」ことと「説明できる」ことには差があります。
体験を経験に高めようと考えれば、自然に「自分の言葉で説明してみよう」という行動につながります。
第二に、既に知っていることと新しい体験を結び付けることが出来るからです。
理解が深まるとは、知識が単純に増えることだけではありません。
たとえば阪神・淡路大震災について授業で学んでいた生徒が、実際に被災者の話を聞いたとします。
「話を聞いた」で終われば体験です。
しかし、
「授業で学んだ避難所の課題と、この方の話はどうつながるのだろう」
と考えると、知識と体験が結び付きます。
すると、それまで教科書の中にあった知識が、自分の中で意味を持つようになります。
これが
「深い理解」です。
第三に、
「なぜ?」を生むからです。
体験を経験にしようと意識して
「私は何を学んだのだろう」
と考えます。
すると、
「なぜこうなったのか」
「他の場合はどうなのか」
「本当にそう言い切れるのか」
という新しい問いが生まれます。
つまり、
体験が問いを生み、問いが理解を深めるのです。
第四に、他者へのアウトプットによって自分にはなかった視点を入れることが出来るからです。
「自分はこう考えた」と意識して話してみる。
すると友人から、
「でも、こういう見方もあるのでは?」
と言われる。
そこで、
「確かにそうだ」
と意識して考え直す。
この瞬間、自分一人では到達できなかった理解に進んでいます。
友人や先生との対話や質問、振り返りを通して
「新たな意味や理解の深まり」につなげることになります。
そして第五に、最も重要なのが、次の場面で使える知識にすることです。
本当に理解したことは、その場だけで終わりません。
- ・数学で学んだ考え方を物理で使う。
- ・探究活動で身につけたデータ分析を社会問題の分析に使う。
- ・部活動で学んだチームづくりを学校行事で使う。
このように、ある場面で学んだことを別の場面に応用することを、意識しておくことで理解は本物に近づきます。
まとめると、体験するだけでは、まだ学びは完成していない。
体験 → アウトプット → 意味づけ → 経験 → 深い理解 → 次の行動
「理解を深める」とは、
「知ったことが増える」ことではなく、
「意識して行うことで、体験したことの意味やつながりが見えるようになること」だと考えます。
2学期は様々な面で実力を付ける期間です。
3年生は今日の話を勉強に生かして欲しいと思います。
また、2年生、1年生は勉強方法に加えて、探究活動や課題研究、部活動の新チームの活動などで生かして欲しいと思います。
最後に、私はいつも同じことを言いますが、「やりたいこと」や「やるべきこと」に積極的に挑戦して欲しいと思います。
「経験」を積むには、まず「体験」が必要です。そしてその機会を「体験」で終わらせず「経験」に換えて、成果に繫げて欲しいと思います。
以上で2学期始業式に当たっての話とします。2学期も充実した生活を送ってください。
<おまけ>以下は、時間の都合で省略しました。
(1)私の体験を2点、少し詳しく紹介します。
○ 東京大学では本校のOBお二人から世界で活躍されている経験をお話いただき、理学博士で総長特任補佐の有馬教授から物質についてのお話しを通して、研究の楽しみかたや観察・実験の大切さを教えていただきました。研究者として、研究過程では結果が外れて同然で、実は失敗からの方が経験や新しい法則に繋がるというお話しが、頭に残っています。
特に印象深かったのは本校57回生のゾロタリョワ・クセニアさん(女性)のお話しでした。ソビエト連邦の崩壊で7歳の時に来日、伊川谷で中学校生活を送り長田高校に入学。長田高校で充実した高校生活を送り、ロシア大学に入学。卒業後に日本の商社に入社され、海外で仕事をされた。結婚・出産を経験しながら会社の起業に関わる傍ら大学院で学ばれた。現在は東京大学教育学部博士課程で勉強されながら、会社代表や大学講師として活躍されている。氏のバイタリティー溢れる経験や学びについて、長田高校に来て、生徒たちに話を聞かせて欲しいとお願いしてきました。
○ 関西学院大学の理工学部で情報工学・AIを教えておられる巳波教授とお話し刷る機会を持てました。長田高校でもAIを活用した他校に真似のできない先進的な研修や勉強法が出来ないか、などについて一緒に考えてもらいました。非常に勉強になったと同時に、知らないお話もたくさん聞けてワクワクしました。
(2)夏季休業中に様々な話題があったが、気になったニュースはありますか?私が気になったニュースを4つ紹介します。
私が気になったニュースを4つ。
① 災害に関する出来事、ニュースが8月に集中した。
- ・熊本地震
- ・千葉、石川県能登の豪雨被害
- ・中国・ネパールの国境で起きた土石流(AI画像かと思った)
- ・政府の地震調査研究推進本部
「阪神・淡路」断層M7.8「最大7%」30年以内の地震発生率Sランク、近畿全体で30年以内にM6.8級の地震50~60%と推計
② 18歳未満のSNS利用制限が加速
- ・フェイスブックやインスタグラムを展開するアメリカの企業「メタ」が18歳未満のSNS利用時間を2時間に制限すると発表
- ・若者に依存などの影響を与えたと州が訴訟し、52の州が制限で和解した。
- ・日本では性的な画像や動画を送らせて、拡散するとの脅しや金品の要求をされる犯罪「セクストーション」日本で2022年頃から被害が急増し、特に10代男性の相談が増えている。
気になることがあればすぐ相談を。SNSで繋がった友達を安易に信用してはいけない。
③ インフルエンザ、東京などで8月中に流行期に入っている。
-
- ・東京では去年より1ヶ月以上早い。
- ・季節が冬に当たる南半球からの観光客が原因ではないかとされている。
- ・2学期の学校再開が増加促進の要因になる可能性あり。自身に風邪症状の兆しがあればマスクで拡散を防ぐこと。
- ・2学期は体育祭、修学旅行、3年生は勉強の加速の妨げにならないように。
④ 一番目を引いたのは「新入社員初任給100万円-突出した能力10人内定」「AI時代 探究型人材を活用」
- ・長田生にはチャンス!?
- ・2年生の課題研究やSSH事業を通して尖った人材を目指して欲しい。
(おまけは以上です)