科目「日本の文化」第1回構想委員会審議経過

平成18年4月20日(木)

 

事務局からの提案事項

○事業の趣旨・事業内容

事業の趣旨

国際社会に生きる自覚と多様な文化を尊重できる態度や資質を育てるため、日本の伝統文化等の学習活動を行うことを目的とした本県独自の科目を開発し、県立高等学校への普及を図る。

事業内容

1 構想委員会の設置

2 教材開発委員会の設置

3 県立高等学校への教材の配付

4 県立高等学校において授業の実施

※1〜3については平成18年度中、4については平成19年度以降の実施。

 

○科目・教材の基本的な考え方

科目の基本的な考え方

1 日本の歴史をベースにした学習であること。

2 日本や自らの住む地域(兵庫県)の伝統文化の学習であること。

  衣食住といった生活レベルの文化(生活文化)も含めた伝統文化の学習であること。

4 国際社会に生きる自覚と多様な文化を尊重できる態度や資質を育てる学習であること。

5 日本や自らの住む地域(兵庫県)の伝統文化の一端を体験、体得できるような学習であること。

教材の基本的な考え方

1 単元ごとに独立した構成になっていること。

2 生徒の普段の授業に活用できるものであること。

  シミュレートできる指導例が単元ごとに整理されていること。

4 さらに深める学習、体験する学習が可能なような配慮があること。

 

○事業化に至った背景

 本事業の趣旨は、国際社会で生きる子ども達に日本の文化について教え、国際社会に生きる自覚と多様な文化を尊重できる態度や資質を育てることである。これまで伝統文化の学習活動をする場合に、教科書すらないし、学校現場で議論することもなかった。そこで、本県独自の教材を開発することとなった。

 昨今修学旅行や語学研修で海外へ行く高等学校も増えている。また、海外から生徒を迎えることも多い。海外からの高校生に伝統舞踊をしてもらうことがあり、非常に素晴らしい自国の伝統文化を我々に紹介してくれる。お返しに何かしようということなっても、何ひとつ出し物がないこともある。日本の文化として何を紹介するべきかを考えると、困ることもあり、そういう状況を改善していかなければならないと考える。


委員会での意見及び科目の内容等について

○日本や地域の文化を学ぶということについて

・日本の文化を言う場合の大きな問題は、偏狭なナショナリズムに陥ったり、アイデンティティのないグローバリズムになったりしないことである。日本の文化をベースにしながら、国際社会の中でいかに子どもたちを育てていくかということを具体化していきたい。

・兵庫県立美術館が主催で、「ネットミュージアム兵庫文学館」を制作しており、県民が文化に触れる機会を増やしている。

・兵庫県には、人的資源を含めて様々な文化資源がある。それらをひとつにして、体系化していきたい。

・伝統文化イコール郷土文化かといえば、必ずしもそうではない。郷土文化はひとつの資源である。それをそのまま学ぶというのでは単純すぎる。資源を羅列するだけではなく、様々なものを我々の手でひとつにする作業が必要である。

・地域というものは、ひとつの分野だけで構成されるのではなく、自然・民俗学・考古学等様々なものが組み合わされている。そのように様々なものを組み合わせることによって、兵庫県としての地域の個性のすばらしさや豊かさを子どもたちに伝えていくことができる。

・現代社会では季節感が失われている。それにより地域の個性、日本人の個性を喪失している。そのような季節感も子どもたちに伝えていきたい。

・海外に出ると、日本の伝統に対して興味があるが、今の日本にも興味を持った外国人が多いことに気づくことがある。

・文化を学ぶことによって、日本人の生活基盤に気づかせることができる。

・ハイテクには伝統的な技術が活かされていることが多い。携帯電話がこれほど小さく、軽くなったことには、金箔の技術、紙すきの技術が活かされている。日常生活の何気ないものでも伝統文化や技術が活かされて、生活の便利さが生まれている。文化というものがいかに素晴らしいものかが分かる。

・科目を勉強することによって、日本にこういう文化があったと気づかせることも必要であり、そこから興味があるものに進むことができる。

・文化は小さい頃から教える方がよいので、小学校の子どもにもこのような教育が必要であると考える。

 

○国際交流について

 ・国際交流には受容と発信がある。発信するためには、まず自分のことを知らなければならない。世界の中の日本を意識しながら、日本の文化を外国の人に伝える能力を身につけさせる。

 ・日本人は、吸収は得意だが発信は不得意である。小さなことでもかまわないので、自国のことに気づき、それをアピールできるようなものを作りたい。

・日本の文化財を勉強することで、外国の文化の見方が広がった。地域文化を掘り下げていく中で、世界の文化が見えてくるものである。

・生徒の受け止める姿勢を大事にしたいし、我々が生徒に何を伝えたいのか、同時に外国の生徒に何を伝えるのかということを大事な視点として教材を作っていきたい。


○科目の内容・教材開発と委員会の役割について

・「生活文化」・「伝統文化」・「地域文化」の3分野を柱として、構成を考える。

・伝統的な文化だけでなく、現代の日本、テクノロジー、日本人のこころについても取り扱う。

・今の日本について興味のある外国人高校生も多い。例えば、ハイテクトイレや文具店等にも興味がある。日本人の生徒のレベルで当たり前の今の日本を考えていきたい。

・「伝統文化」イコール「過去の文化」ということではなく、幅広く考えていきたい。

・兵庫県独自の教材であり、地域の事柄を扱ったものにする。地理歴史の中の科目ではあるが、これまでの歴史の教科書は、政治や経済の歴史が中心であるため、文化史は系統立てた理解が難しかったため、日本史とは異なる内容にし、理解しやすくなるよう工夫する。

・日本の文化を教えていくためには、今まで教えてきた教科書ではなく、ばらばらの文化史を整理することが重要である。教科書に記載されていない生活文化や民俗について知ることも重要である。

・この科目は兵庫県独自の科目であるため、日本史の科目にある文化の扱いをそのまま流用しても意味がない。時代的な扱いをするのが日本史であり、そのような日本史的な扱いをしないのが独自の学校設定科目であると考える。

・高校生に多様な文化を尊重する態度と資質を育てる。

・兵庫県内の文化資源を体系的に学習できる内容にする。

・季節感、生活感、地域の個性、日本人の個性等が学べるものにする。

・日本の歴史を学んでいない生徒を対象とすることにもなるため、どのレベルまで教えていくのかを考える必要がある。また、生徒の視点でとらえることが重要である。生徒にある程度理解できるような内容であれば、国際社会の中での発信も可能になる。

・教材の開発段階で、授業研究会によるシミュレーションを行い、学校現場の体験を教材開発にフィードバックさせる。

 ・科目を策定し、教材を開発した後、各高等学校へ教材を配付する。

 

○今後の予定について

・年間5回の構想委員会を予定している。その他、幹事会を開催し、構想委員会に提案する内容を審議いただく。

・具体的な方向性が決まれば、教材開発委員会を設置し、実際の教材開発や資料収集、執筆編纂作業を行う。

・平成18年度1年間で教材を開発する。12月頃までには完成させ、次年度の選択科目として各高等学校が取り入れられるようにする。

・平成19年度、希望する各高等学校において選択科目として設置する。