理容科は昭和18年9月1日に設置され、昭和26年理容師養成施設として認可を受け、現在に至っている。 その間、多くの卒業生が理容師免許を取得し、社会へ巣立っている。約180名近くの理容科卒業生のうち、約半数が理容師として兵庫県内外で就労し、そのうちの約40名の卒業生は、独立開業をしている。


教育課程

本校理容科においては、平成10年度からの理容師法の一部改正に伴い、それまで行っていた養成課程を改め、本科3年間の養成課程と専攻科2年間の養成課程を開設した。

本校は、聴覚に障害のある生徒が、立派な職業人として社会自立できるように、理容師免許の取得に向けて更に充実を図っている。寄宿舎もあり兵庫県だけでなく、他府県からの生徒も学ぶことができるようになっている。
(1) 人格を高め豊かな教養を身につける。
(2) 衛生知識を修得する。
(3) 美について教養を深める。
(4) 専門知識を習得する。
(5) 技術を正しく修業する。

 学校近隣地域との交流及び特別活動として、神戸市垂水区名谷町にある「社会福祉法人 丸 特別養護老人ホーム オービー・ホーム」のお年寄りの方々を対象に毎月1回老人ホームへ出向き、散髪の奉仕活動を行っている。この活動は平成7年度より実施し、今年で9年目を迎えようとしている。

 この活動は、理容科生の技術向上及び近隣地域との交流という目的で始まった。開始当初は施設のお年寄りと生徒とのコミュニケーションがうまくいかず、悪戦苦闘した。生徒とお年寄りがお互いに身振り手振りで理解しようとする取り組みが続き、1年を過ぎる頃より、お互いの気持ちが通じるようになった。平均すると、1回の訪問で約15名前後のお年寄りの散髪を行ってる。また活動開始当初は、本校の理容室に来ていただいて、散髪を行っていたが、お年寄りの方々の体力的な事を考慮し、最近は施設の送迎の協力を得て、施設に出向く形で奉仕活動を実施している。

 生徒は、障害があるということで普段は、他の人たちから援助をしてもらうことが多いのだが、この活動を通して、自分たちも社会に貢献できるということを体感し、自尊心が芽生えてきたようである。他の人から頼りにされている、自分たちを待っている人がいると思うと、社会の役に立っている自分自身に対して誇りをもつことにもつながってきたようである。

 また、年齢の離れた老人の方との交流を通して、他人を思いやる心が育まれてきている。最近では、10代の少年が60代、70代の老人と接する機会がほとんどない中で、この奉仕活動は、奉仕体験を通じて生徒の心を揺さぶったのではないかと考えている。

 現在、教育はゆとりの中で「生きる力」を育むことが基本的なねらいとされ、「多くの知識を教え込む教育」から「自ら学び、自ら考える力を育む教育」に変わろうとしている。

 この奉仕活動から得ることのできた「自尊心」や「他人を思いやる心」が、日々の授業にも反映しているようである。理容実習はもとより、座学にも積極的に取り組み、もっと理容に関する知識を豊かにし、技能のレベルアップを図りたいという前向きな気持ちが生徒の学習態度に表われてきている。
奉仕活動
指導方針
自分たちは聴覚に障害を持っているが、自分たち以外の人達も何らかの障害又は悩みをもっていて、日々その障害や悩みと共に生きている。だから自分達もこれからの人生においてハンディをもっている事を恥じることなく前向きに生きていきたい。
学校を卒業するまでに一生懸命勉強して理容師免許を取得し、一日も早く立派な理容師となり、仕事の休みを使って、お年寄りの方々や障害者の人達の散髪をして、社会の役に立ちたい。
生徒の感想
この活動を通じ、奉仕をすることのすばらしさをお年寄りから教えてもらった。私も人の役に立つことを実感でき、学校での勉強にも力が入った。今後もこの奉仕活動が続いて欲しいと思います。
施設の意見
特別養護老人ホーム オービー・ホームのお年寄りさんも聾学校の散髪をしてくださる生徒さんたちに、とてもお世話になっています。昨年までは、何人かのお年寄りさんを連れて、聾学校まで散髪をしてもらいに伺っていましたが、オービー・ホームのお年寄りさんも年を重ねられて、学校まで伺うのが難しくなってしまい、その分、聾学校の方々にホームまで来ていただいて、散髪をしてもらう日をお年寄りさんは、より一層楽しみにされ、どのお年寄りさんも散髪の方々が来られると「私も、私も」と理容の椅子の周囲に集まってこられ、いつも無理をお願いして予定以上のお年寄りさんの散髪をしていただき、そんな時もイヤな顔一つせずに、快く散髪して下さる皆様には、本当に頭が下がります。オービー・ホームの開設当初からずっとお世話になりっ放しですが、どうぞこれからも末永く宜しくお願いします。
沿革
理容科の履修科目(平成17年度入学生徒)
学 年 科 目 名
本 科1年 国語総合 地理A 現代社会 数学T 理科総合A 体育 美術T 英語T 家庭総合
情報A 理容保健 理容文化論 理容技術理論 理容実習 課題研究
ホームルーム 自立活動 総合的な学習の時間
本 科2年 国語総合 世界史B 数学T 体育 家庭総合
衛生管理 理容保健 理容の物理・化学 理容文化論 理容技術理論 
理容運営管理 理容実習 課題研究
ホームルーム 自立活動 総合的な学習の時間
本 科3年 国語表現T 体育 
理容関係法規 衛生管理 理容保健 理容の物理・化学 理容文化論
理容技術理論 理容運営管理 理容実習 課題研究
ホームルーム 自立活動 総合的な学習の時間
専攻科1年
(養成課程)
国語総合 体育
理容関係法規 衛生管理 理容保健 理容の物理・化学 理容文化論 
理容技術理論 理容実習 理容情報処理 理容モード理論 食品保健栄養理論 課題研究
理容エステ ホームルーム 総合的な学習の時間
専攻科2年
(養成課程)
体育
理容関係法規 衛生管理 理容保健 理容の物理・化学 理容文化論 
理容技術理論 理容運営管理 理容実習 課題研究 理容エステ
ホームルーム 総合的な学習の時間
専攻科1年
(習練課程)
国語総合 数学基礎 体育
衛生管理 理容技術理論 理容実習 理容情報処理 課題研究 理容エステ
ホームルーム 総合的な学習の時間
専攻科2年
(習練課程)
国語総合 体育 理容実習 課題研究 理容エステ
ホームルーム 総合的な学習の時間
これから
今後は、次のようなことを充実、発展させていきたいと考えている。
  
1 特殊技術の習得

     アイロン技術、エステ技術、パーマ技術、ネール技術、ヘア・カラー技術等

2 専修学校との連携
     近隣の専修学校と協力体制を確立し、定期的な情報交換・意見交換
このページは、平成14年「特別支援教育」 No.8への寄稿内容を一部修正して作成しました。
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2つの養成課程 本 科 専攻科
1年 2年 3年 1年 2年
養成課程T 習練課程
養成課程U 理容科以外の学科又は高等学校、大学等
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