(((平成30年度 研究紀要 第129集)))
 

道徳科の充実に向けて
-「指導資料」を活用した校内研修パッケージの作成-

矢田   一    栄   久視
髙舘 裕児    田中 賢司

 県教育委員会は、道徳の教科化に向けて兵庫県道徳教育実践推進協議会等の助言等を受け、「教員の実践的な授業力の向上」を最重要課題とし、県が実施する研修の充実を図るとともに、授業力向上をテーマとした「指導資料」を各校に配布し教員を支援してきた。
 しかしながら、本研究において、当教育研修所が実施する「道徳科授業づくり講座」を受講した小・中学校教員を対象とした調査を行ったところ、道徳の教科化について多くの教員が「不安感・負担感」を感じていること、「指導資料」が有効に活用されていないことが課題として見られた。
 そこで、「不安感・負担感」を軽減する要素を3つの視点に整理し、「指導資料」を中心に据えた授業づくりの研修を実施したところ、教員の「不安感・負担感」が軽減することが明らかになった。この結果を基に、県教育委員会作成の「指導資料」を活用した校内研修パッケージを提案する。

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“兵庫版”地学教育研修プログラムの作成
-県内施設との連携を通して深い学びへ- 

荒木 和仁    奥田 健二
京極   潤    遠山八千代
古林 達也

 平成28年度に行った本研究において、科目「地学基礎」等を指導する理科教員を対象とした研修を実施する必要性を明らかにして、探究活動に発展できる研修プログラムを提案した(研究紀要第127集)。また、平成29年度において、実施した「専門性を高める地学講座」の成果と課題の分析を踏まえ、教員研修の在り方について提案した(研究紀要第128集)。
 3年目となる平成30年度には、「専門性を高める地学講座」を県立人と自然の博物館で実施し、授業に実習等を取り入れる必要性とその実践例について取り扱った。講座を通して、生徒の理解を深め探究活動を充実させるために、校外施設を活用する視点が必要であることを受講者に実感させることができた。また、受講者の授業実践からは、教員自身が校外施設にて実習を行ったことが深く教材研究を行う契機となり、授業の幅を広げられたことが明らかになった。
 特に地学を専門とする理科教員が少ない中、理科教員の知識と指導の専門性を高めるために、校外施設のさらなる活用を促す必要性を再確認し、今後の研修講座の充実を図る一助とする。

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授業研究の在り方
-授業について語る〈ことば〉に着目して-

荒木 和仁    田中 慎一
瀬尾 智宏    蔭木 作幸 
蘆田 典幸

 当教育研修所では、高等学校2年次研修、及び高校教員3年次研修講座において、教科ごとに研究授業を実施する機会を設けている。受講者は、研究授業者の学校を訪問し、授業参観及び研究協議(2年次研修は事後のみ。3年次研修では事前・事後ともに行う。)を通じて、授業研究の手法を経験する。
 研究授業者の勤務校を訪問しての研修は、授業の参観により、受講者にとって気づきや学びが多い。その一方で、学習指導案の読み取りが困難である、協議がうまく噛み合わない、などの課題が明らかになった。これは、受講者が授業について語る〈ことば〉が多様であり、読み手に十分に伝わっていないからだと考えられる。本稿では、授業研究の過程の中で、特に生徒の現状について語る〈ことば〉に着目し、実際に受講者によって述べられた〈ことば〉を分析し、その課題を明らかにした上で、宇佐美寛氏(千葉大学名誉教授)の理論を援用しながら、生徒の現状を可能な限り一元的に述べられるように、〈ことば〉を明確化する方向性を示す。
        

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業務改善に向けたファイルシステムの開発
-電子データと紙ファイルが連動した一元的な情報管理に向けて-

田中 正晴    村中 利章
里   知純    堂阪 博文

 過去に作成された文書に含まれる情報を有効に活用し、効率的に業務を執行するためには、必要な文書の検索を迅速に行う必要がある。現在、県教育委員会や県立学校において、多くの機関で電子データと紙ファイルの分類・整理基準に整合性がなく、その全体像も視覚的に把握しにくい状況である。そのため文書の検索に時間がかかり、効率的な業務執行の妨げとなっている。これを踏まえ、本研究では、「いつでも、だれでも、すぐに活用できるファイルシステム」の構築を目指し、開発を進めた。開発にあたっては、20,000行を超えるExcelの表中に、目的のセルを素早く選択できるようリストを工夫した。また、ワンクリックでフォルダ全体を俯瞰する「ファイル基準表」を作成するためのプログラムの作成に時間を要した。
 今回開発したファイルシステムにより、所属を超えた共通ファイルシステムの構築が可能となり、異動時や担当者以外による文書検索のストレスが軽減される。また、一旦このファイルシステムによる文書の分類・整理を行えば、以降は年度替わり等の業務の繁忙期にあっても、本研究のファイルシステムを活用することで文書の分類・整理、検索にかかる業務改善を図ることが可能であることを示す。

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 政治的教養を育む教育の充実に向けて
-全ての教員による実践を目指して-

坂東 修司    横山 恵子
摺石 敏之    田中 義晃
    廣田   穣

 高等学校の教員が、政治的教養を育む教育の重要性は認識しつつも、政治的中立性の確保やその教育内容等から指導にとまどうことが多いという昨年度の研究結果を踏まえ、本研究では新設の「政治的教養を育む教育」実践講座において公開授業を実施し、事前・事後アンケート調査(教員・生徒)の分析・考察を行った。その結果、教員にとって「政治的教養を育む教育」の実践は難しいものではなく、生徒にとっても地域課題の発見・解決に向けての意欲・関心が高まるという効果が見られることを明らかにした。
 こうした成果から、生徒の政治的教養を育み、主体的に社会へ参画し協働しようとする態度を養うことを目的として、政治的教養を育む教育を実践する上での留意点や工夫等を考察し、各学校において全ての教員が実践できる「政治的教養を育む教育」の具体的な授業プランを提案する。

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自他の命を大切にする心を育む教育支援に向けて

-自殺予防に生かせる教育プログラムの実践②-

稲次 一彦    寺戸 武志
    福田 裕子

 心の教育総合センターでは、平成28年度に「自殺予防に生かせる教育プログラム」を作成し、当教育研修所Webページで提供している(研究紀要127集)。
 平成29年度の研究において、本プログラム実施の際の教員研修の在り方についての考察や高等学校用プログラムSTEP2までの効果検証を行っている。そこで平成30年度は、研究1・2として、高等学校用プログラムSTEP3までを実施した生徒の意識変化について量的及び質的に調査・分析を行った。さらに、研究3として、高等学校において中学校用プログラムを実施した事例について、その効果の検証を行った。その結果、本プログラムの効果は生徒全体を対象とした場合、「早期認識」や「援助希求」等、自殺予防につながる意識を高めるにはSTEPを重ねることが必要であることが示唆された。それに対し、それらの意識が比較的低い生徒には本プログラムの1つだけを実施しても力を伸ばすことにつながる可能性について確かめられた。また、高等学校において中学校用プログラムを実施しても、効果に差は見られなかったことから、高等学校で中学校用プログラムの活用が可能であることが示唆された。

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小中高等学校のつながりを意識した小学校プログラミング教育の充実

-資質・能力の育成に向けた授業づくりのポイント-

波部   新    古林 達也
安本 靖史     山本 義史
脇本 真行

 2020年度から全面実施となる小学校新学習指導要領において、プログラミング教育が必修となり、本県においても小学校段階からのプログラミング教育のスムーズな導入および推進が求められている。
 本研究では、まず教員アンケート調査を実施し、小学校教員のプログラミング教育に対する準備の実態を明らかにした。中でも、プログラミング教育で児童生徒に身に付けさせたい内容について、小学校教員と既にプログラミング教育を行っている中学校技術科等の教員の意識に差があり、小学校教員は、問題解決能力や創造的思考力の育成に対する課題意識が希薄であること等が分かった。
 これらの結果を踏まえ、小中高等学校のつながりを意識した創造性を育むプログラミング教育を推進する研修講座を実施した。また、その後の授業実践も踏まえて検証を重ね、授業づくりのポイントを、「導入」「プログラミング的思考」「授業展開の留意事項」の3つに分類し、わかりやすくこれらをまとめた「プログラミング授業チェックシート」の作成を行った。このチェックシートをもとに小学校プログラミング教育の充実に向けた授業づくりのポイントについて提案する。

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通常の学級における特別支援教育の視点を生かしたICT活用の在り方
-「教えるツール」から「学ぶツール」へ-

池内 晃二    福田 秀則
今西 広幸    吉竹 太志 

 本研究グループは、平成28年度から通常の学級における特別支援教育の充実に向けたICT活用の在り方について、①一斉学習での児童生徒の興味・関心を高める学び②個別学習での児童生徒一人一人の能力や特性に応じた学び③児童生徒同士が教え合い学び合う学び(協働学習)を柱として研究を進めてきた(研究紀要第127集・128集)。
 平成28年度からの2年間の研究を通して、通常の学級における特別な支援が必要な児童生徒に対し、一斉学習におけるICT活用は定着してきているが、個別学習においては、ICT活用が難しい現状にあることが明確になった。そこで、今年度は、通常の学級における特別な支援が必要な児童生徒が求める支援が何かを明確にし、その代替機能の活用方法を身につけるためのICT機器として、タブレット端末活用における効果の検証を行った。その結果、タブレット端末の活用が「教えるために教師が使う道具」から「自らの学びに生かすために児童生徒が使う道具」への転換が必要であることが示唆された。さらに、児童生徒から自然発生的に協働学習につなげている姿が見られたことから、通常の学級における特別支援教育の充実に向け、ICT活用が大変有効であることが実証された。

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