令和元年度第三学期始業式 式辞

  皆さん、新年明けましておめでとうございます。令和2年、西暦2020年、東京オリンピック・パラリンピックイヤーがスタートしました。昨日の警報発令で、一日遅くなりましたが、本日、元気な皆さんと再会できたことを、大変嬉しく思っています。
  さて、どんな冬休みを過ごされましたか。充実、納得の14日間だったでしょうか。
  二学期の終業式では、「新年には、高い『志』を持って、しっかり『ビジョン』を描いてください」とのお話しをさせていただきました。今年は、「こんなことに挑戦しよう」「これを実現しよう」などなど、いろいろな思い、ビジョンを描いておられることと推察します。どうか、その気持ちを忘れることなく、実現に向けてコツコツと粘り強く、“グリット:やり抜く力”を発揮して取り組んでいってください。
  高い「志」を持つことで、周辺の細々したことにとらわれることなく、右往左往せず、目標に向かって邁進できるものです。そして、この時の目標への「第一歩」、これは、「志」の高さ、掲げた目標によって異なったものになります。自らとしっかり向き合い語り合い、高い「志」を持って熟考し、妥協の無い目標を掲げ、「第一歩」を踏み出し、行動に移してください。
  登山に例えるならば、皆さんも一度は登ったことがあるでしょう、「六甲山」、山頂932mを目指した「第一歩」、また、兵庫県で最も高い山、「氷ノ山」、山頂1,510mを目指した「第一歩」、はたまた、我が国最高峰の「富士山」、山頂3,776mを目指した「第一歩」、そして、ついには、世界最高峰、「エベレスト」、山頂8,848mを目指した「第一歩」・・・これらは同じ「第一歩」でしょうか?
   「六甲山」・・・気分転換に、気の合う仲間と健康を考えて、っといった感じでしょうか。「氷ノ山」・・・スキーでは雪質が良く人気のゲレンデですが、リフトを使わずに山頂までは、ちょっとしたチャレンジです。私は高校時代、遠足で登った経験があります。「富士山」・・・特に初めてなら大きな期待を持って、必要な準備に加え、もちろん、つらさはあろうけれども、楽しみが上回っているでしょうか。「エベレスト」・・・世界最高峰の山頂を目指しての第一歩、これには、練りに練った計画、多額の費用、大がかりな準備、そして何より、それまでの山登りとは全く違うものが必要になります・・・それは、「命」をかける“覚悟”です。これ無しには、エベレストへの「第一歩」は踏み出せません。そうなのです、掲げる目標で、必要な“覚悟”言い換えれば、求められる“心構え”が大きく変わってくるのです。
  皆さん、たった一度の人生、どんな“覚悟”を持って、どんな“目標”に向かって行かれますか。義務教育、いわゆる「皆さんの保護者の方々が、皆さんに9年の普通教育を受けさせる義務」は終了しています。今、ここに居る皆さんは、9年の普通教育の上に、更に高等な教育を受け、自らを高めようと、今度は保護者の義務ではなく、自主の精神で受験し突破して集まっているというわけなのです。ここでは、中学3年生の時とは大きく異なる“覚悟”を決めなければなりません。

  先の戦争である「大東亜戦争」いわゆる、「第二次世界大戦」では、皆さんと同じ年代の多くの若者が、“お国の未来のために”と、“覚悟”を決め腹をくくり、尊い命を落とされました。今年は、戦後75年目の大きな節目になります。皆さん、“お国の未来のために”の“未来”とは、いったいいつのことでしょうか・・・それは、まさに“今日”“今”なのです。多くの尊い命の犠牲の上に、今日の我が国の繁栄と、何より「平和」があるのです。その“今”を生きる私たちが、ただ毎日をぼんやりと過ごしていては、命をかけて、今日の平和で豊かな日本のために犠牲になられた方々に、あまりに申し訳なく、合わす顔がありません。
  加えて、今年は、阪神淡路大震災から25年目の、こちらも大きな節目を迎えます。多くの、夢や希望に満ちた人々が、突然に道半ばにして犠牲になられました。平成7年1月17日午前5時46分、あの時の、それまで経験したことのない激しい揺れの感覚は、十数秒間だったにも関わらず、今でも私の体がしっかりと覚えています。平和ボケしていた私が、天地から、「お前は、『地球』という、生きて活動している真っ只中の星の上に、ただ住まわせていただいているだけの存在なのだ」と、初めて実感させられ、そして、「生きるなら、寝言を言わずしっかり生きろ!」と教えられた、それまでの人生観を大きく揺さぶられた出来事でした。

  皆さん、今の平和への感謝を忘れず、いただいた命を、“覚悟”を持って目標を掲げ、しっかり歩もうではありませんか。自らを可能な限り高め、少しでも世のため人のために役立つ人となる、という「生きる目的」を心に中心に据え、着実に進んでいこうではありませんか。「あんな職業に就きたい」「こんな人になりたい」「この分野を追求したい学びたい」、「私は兵庫県内で頑張ろう」「いやいや県外へ出よう」「首都東京で」「アメリカで、アジアで、ヨーロッパで」・・・目標は無限であり、そして、今、ここにいる皆さんの可能性も無限なのです。
  現に、本校を卒業された皆さんの先輩方も、様々な方面で活躍されています。
  41回生の女性、友野有里(ともの ゆり)さんは、現在、日本体育大学1年生で卓球部に所属し、今年開催される「東京パラリンピック」出場を目指しています。
  昨年8月に開催されました「ジャパンオープン」で優勝、10月の「フィンランドオープン」で優勝、12月の「国際クラス別パラ卓球」で準優勝と、本校卒業後も活躍を続け、現在、世界ランキング10位まで上がってきており、東京パラリンピック出場が、ますます現実味を帯びてきました。
  39回生の男性、永田公平(ながた こうへい)さんは、シンガポールへ家族旅行に行った時、現地で起業していた父親の知人が目を輝かせて仕事に打ち込んでいるのを見て、「こんな大人になりたい」と、19歳で起業し、現在、マレーシアでコンサルティング会社を経営するなど、活躍中です。
  38回生の陸上部に所属していた女性、大東優奈(だいとう ゆうな)さんは、現在、兵庫大学4年生ですが、年末12月30日に行われ、全国生中継されました「全日本大学女子選抜駅伝」で、アンカー区間である第7区を、降りしきる雨の中、区間9位の好タイムで駆け抜け、チームを3位という輝かしい成績に導かれました。
  30回生の女性、赤﨑夏美(あかざき なつみ)さんは、朝日放送のテレビ番組「おはよう朝日です」のエレクトーン演奏者として活躍中です。
  大先輩の中では、6回生の男性で、俳優や声優として大活躍中の、古田新太(ふるた あらた)さんがおられます。
  こうして挙げていけば切りが無いのです。
 皆さん、いかなる分野でも、本気で求めたことが必ず実現するのです。まずは“覚悟”を決めての「第一歩」です。

  二学期の終業式に、つぶれていく生卵のお話しをさせていただきました。“言霊”でしたね。日々、遣う言葉、言い換えれば、自分に浴びさせている言葉にも注意を払いながら、自らを高めることに取り組んでください。日々の「言葉環境」・・・どんな言葉で物事を捉え見ているかが、皆さんの人格形成に大きく関わっているのです。
  チームのレベルアップが個々のレベルアップに直結します。友を大切にしてください。仲間である友に嫌がらせ、イジメなど許されるわけもなく、それは実に恥ずかしく、そのようなレベル、ステージで生きている場合ではあろうはずもないのです。
  それでは、今年も、気持ちを爽やかに保ち、笑顔を大切に、「クイックスマイル」を忘れず、物事を斜めに見ずフラットな心で過ごしてください。そして、もし、困ったこと、悩ましいことがあれば、決して一人で抱え込まず、先生、友達に相談しながら解決し、皆で前進していきましょう!友の幸せが、自分自身の幸せにつながっていることを決して忘れず、「チーム伊川谷」を、皆で向上・発展させていきましょう!
  皆さんにとって、素晴らしい飛躍の年となりますことを祈念し、令和元年度第三学期始業式の式辞とします。



            令和2年1月9日   県立伊川谷高等学校校長 川崎 芳徳



                 COPYRIGHT © 兵庫県立伊川谷高等学校 Allrights reserved.