校長先生の授業 5月6日までの約束⑨

みなさん、元気ですか。緊急事態宣言が解除になり、街にはずいぶん人々の姿が見受けられるようになりました。決して元の生活に戻るのではなく、新しい生活様式を取り入れた社会がスタートします。いよいよ学校再開です。感染予防の対策を生活の中に定着させることが不可欠です。最初は慣れないかもしれませんが、一人ひとりが責任を持って行動していくことが大切です。では、9回目のミニ授業です。

今回は「和田の130キロ台はなぜ打ちにくいか」(著者:佐野真 出版社:講談社現代新書)です。

 なんとも変な題名と思われた人もいるのではないでしょうか。この話は、福岡ソフトバンクホークスの和田毅(わだ つよし)投手のことについて書かれた本です。和田投手は身長179センチ74キロ。プロ野球の投手としては決して大きくはありません。むしろ小さめの投手です。しかし和田投手がすごいのは、東京6大学野球リーグの奪三振通算記録保持者(三振を一番たくさん取った投手)なのです。そして、プロ野球に行ってからも、三振を取る率が非常に高い投手で有名です。
しかし、球のスピードは140キロにも満たない時もあり、ボールの速さだけで言うと、その辺の高校生でも投げるスピードです。大学1年の時に一度試合で「今のはいいボールだったんじゃないか」と思ったボールが129キロしか出ていなくて、さすがに落ち込んだことも紹介されています。
 何故、あのボールで三振をするのかみんな不思議がっています。和田選手のボールを見た様々な人が、彼の投球について色々な表現をしています。例えば高校時代のテレビ中継の解説者は「120キロ台のストレートをなぜ打てないのでしょう」と言われています。また、甲子園に出たときに対戦相手の帝京高校のバッターが「和田投手の120キロのストレートは150キロに見えた」と言ってます。さらに、大学時代のチームメートは「まるで漫画のように、手元でボールが大きく見えるんですよ。だからボールを捕ることもできない感覚でした」と・・・本当に色々な表現をしています。
 最終的に様々な角度から研究をした結果、次の3つの結論に至ったいきさつがこの本に余すところなく書かれています。それは、①ボールのキレ=回転数が非常に速い、②体がずっと開かずに保たれ、バッターのすぐ近くまでボールを離さない、③腕が体にずっと隠れていてボールの出所が見えない、の3点です。 
 それを読んで、早速YouTubeで調べてみました。すると、和田選手の特集があげられており、投球スローモーションのビデオが流れていました。そこには、和田投手が投球モーションに入ってからボールを投げるギリギリまで腕が体に隠れて、ボールいや腕自体が全く見えない映像が写されていました。まさに動画で見られることのありがたさをとても感じました。 これは、体力がない人でも真似ができることだなと思いました。
 そしてもう一つ忘れてはならないことは、和田投手の生き方です。本書に、早稲田大学でリーグ優勝した際のエピソードが紹介されています。優勝を決めた試合が終わり、球場からグラウンドに帰ってきて皆が優勝に酔いしれている頃、和田選手が1人室内練習場でネットに向かってピッチング練習をしている姿を著者の佐野真さんは目撃しています。彼の突き詰めた研究心と努力が、この成果を生んだのではないかと私は思います。皆さんも自分の好きな分野でトコトン探究して、諦めずにやっていく楽しさを是非味わって下さい。これで今日の授業は終わります。




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