校長先生の授業 5月6日までの約束⑧

みなさん、元気ですか。残念ながら、兵庫県は緊急事態宣言が継続となりました。しかし、来週にはこれも解除になる可能性が出てきました。学校再開はもう目の前まで来ています。そのために、①生活リズムを整えましょう。②今、目の前にある学校の課題をやりきりましょう。③登校に向けて、感染予防の対策の確認と準備をしましょう。始まる不安よりも、出会える楽しみを胸に高校生活をエンジョイしていきましょう。では、8回目のミニ授業です。

今回は「世界でいちばん小さな三ツ星料理店」(著者:奥田 透 出版社:ポプラ社)です。

 著者の奥田透さんは、静岡出身の料理人です。小学校、中学校は野球少年だったそうです。しかし、怪我のため高校ではサッカーに転身したものの途中で挫折。料理は好きで好きでたまらなかったからではなく、何かないかなぁといろいろ思いを巡らせ、アルバイトなどをしながら少しずつ料理の道に進んでいきました。その後様々な挫折を経験しながら、最後は東京銀座でミシュラン三つ星料理店「銀座小十」(ぎんざこじゅう)を開店しました。ミシュランの三つ星というのは、世界最高峰の店に認定された、ある意味甲子園で優勝したようなものです。
 今回この本を読み終わってみて、3つのことにとても感銘を受けました。
1つ目は奥田さんが料理の世界に入った時に一番感じたことが、「できないことをできるだけできることに変えていく」です。それを心がけているうちに、「できないことができるようになる楽しさ」を知ることになっていきました。初めて天ぷらを揚げられるようになった日。初めて茶碗蒸しを作られるようになった日。本当に嬉しくてお母さんに電話をしたそうです。勉強や部活動もそうですね。わからないことがわかる、できないことができる。結局すべての基本はそこにあるんだと思います。
 2つ目は、「頑張っている人は誰かが必ず見てくれている」ということです。銀座に店を開いたもののお客さんは来ず、借金ばかりがどんどん増えていきました。何もかもが追い詰められ、もうだめかなぁと思ったことも度々あったそうです。しかし、日頃謙虚な気持ちで人と付き合っていたことで、ちょっとずつお店の名前が広まり、お客さんがお客さんを呼び、そして最終的にミシュランに選ばれました。今ではもう予約が取れない状況になっています。料理の腕はもちろんのこと、毎日毎日の人との付き合いを大切にしていくことがとても大切だとしみじみ言われています。
 3つ目は、「料理とは気づくこと」です。これは、奥田さんが、奥田さんの師匠から言われ、それを奥田さんも自分のモットーにあげられています。それは、「例えば車を運転するときにどうすれば後に乗っているお客様に気持ち良くなってもらえるか。信号で止まる時も止まることに気づかないくらい気持ち優しくブレーキをかけられるか。料理も同じで、鯛を見てマニュアル通り作るのではなく、その日の鯛、そして気候、湿度、料理をお出しするお客さんのその日の表情、言葉などに注意を払う。そうすると、一回として同じ料理を出しても同じものにはならない」そうです。これは決してAIではできないことですよね。いろんなとこに気付く感性がとても大事です。
 学校が始まれば、また友達や先生と何気ない場面がたくさんあります。そういう積み重ねがそんな「小さなことに気づく気持ち」を作ってくれるのではないでしょうか。学校再開を楽しみに待ちましょう。これで今日の授業は終わります。

  

 『校長室から』のページもご覧ください。
校長室から