新入生への挨拶(2020.4.8 新入生説明会)

 桜の木々の合間から、春の木漏れ日がうらら
かに降り注ぎ、ここ伊川谷はまさに春爛漫を迎えています。本来なら、本日は多くのご来賓並びに保護者の皆様にご臨席いただき、入学式を執り行うこととなっておりましたが、感染症の拡大防止のため新入生説明会という形で皆さんを迎えることとなりました。しかし、ご来賓、保護者の方が皆さんの入学を心より祝福してくださっている気持ちに変わりはありません。
  ただいま入学を許可された200名の新入生の皆さん「入学おめでとうございます」私たち教職員はもとより、在校生とともに心から本当に心から歓迎いたします。また、保護者の皆様、お子様のご入学おめでとうございます。この場にはご臨席いただけませんでしたが、祝福の気持ちをお届けさせていただきます。
  さて、入学に際して、新入生の皆さんに一つだけお話しさせていただきます。
  今まさに未来に希望を持って歩みを止めることなく進んでいかなくてはならない時になっています。東京大学の玄田有史(げんだ ゆうじ)教授が「希望学プロジェクト」という取り組みをされています。その報告の中で、未来に対して希望を持って行動している人には、2つの共通の特徴があるということです。1つめは過去に厳しい試練や挫折を経験しながら自分なりにくぐり抜けてきた人、2つめは自分が損するとか得するといういわゆる損得勘定を考えない人、すなわち自分が損しようが得しようがそんなことは関係ない人だそうです。そのどちらも統計的に顕著なデータが出ている町がありました。それは、東日本大震災で大きな被害を受けながら、3000人の児童生徒のほぼ全員が避難し奇跡的に無事だったことで多くの人に希望を与えている町、釜石です。釜石は東日本大震災だけでなく、明治三陸沖地震のときは津波で人口が半分になりました。また太平洋戦争末期には艦砲射撃で町が焼け野原になりました。さらに、製鉄で有名なこの町に訪れた産業合理化によって、大きな不況に苦しみました。まさに、挫折と再起を繰り返してきた町です。釜石で生きてきた多くの人が、どうしようもない状況の中をくぐり抜けてきました。そして、そのような大変な中であっても、無駄となることを恐れず迷ったらとにかくやってみる、心にしなやかさがある人間力を持った人が多いそうです。
  皆さんは、この1ヶ月あまり、中学校の卒業式をはじめ、入学試験、そして今日を迎えるまで、不安の中でしかし1歩ずつ歩みを止めることなく進んできたことを心から讃えたいと思います。よく頑張りました。だからこそ、皆さんは先の釜石の方たちのように、未来に向けて希望をもち、そして自分の言葉で語り、心にしなやかさがある人間力をここ伊川谷高校で思いっきり磨きに磨いて、充実した高校生活を送ることを願って止みません。また、そのために教職員の先生がたも皆さんを全力でサポートします。そして、保護者の皆様や皆さんを支えてくれたご家族、これまでお世話になった中学校の先生はじめ多くの方々に対して、感謝の気持ちをこれからも忘れないでください。
  新入生の皆さん、さあ今から伊川谷高校での高校生活が始まります。
令和の主人公である新しい時代での皆さんの大いなる活躍を期待するとともに、一人一人の高校生活が充実し、素晴らしい3年間となることを祈念いたします。

       令和2年4月8日

                 兵庫県立伊川谷高等学校長
                           曽 谷  功

 


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