17歳
武のケガは良くなっていったが、相変わらず通院する日々が続いた。この所気分がウキウキしていた。瞳がよくたまり場に来るようになったからだ。今日も病院に行く前に公園を見た。やはり瞳がいた。
「瞳ー!」 瞳は武の方を見て笑顔で手を振った。遠い所からでも瞳の顔が青白いのが分かった。武は急いで瞳の所まで走っていき、 「おい、お前大丈夫か?顔青白いぞ。また倒れないでくれよ。」 と冗談っぽく言った。 | ![]() |
「大丈夫、私の顔が青白いのは生まれつき・・・」 そう瞳は言った。その時、 「ウッ、痛い!」 瞳は地面に倒れこんだ。その時の瞳は体をビクビクと震わせていた。今は冬ではない、夏だ。これは武でもヤバイ事が分かった。 「瞳、瞳ー!」 武は瞳をおぶっていつも通っている病院へ行った。 「誰か助けてくれー!」 看護婦さんが急いで先生を呼んでくれた。 | |
「瞳ちゃんじゃないか!これはヤバイな。早くいつもの病室につれていくんだ。」 瞳は寝台車に運ばれて、どこかに行ってしまった。武に変な汗が流れてきた。とりあえず瞳の病室を探す事にした。内科の前を通り過ぎるた時、声が聞こえてきた。 「瞳ちゃん、このごろヤバイ状態が続いてますね。一年もつでしょうか?」 「このままこの状態が続いたら、もってもこの冬までだろうな。」 武は血の気がひいていくような思いがした。ま、まさか瞳は・・・。 | ![]() |
「心臓病ってのは厄介ですね。若いのにかわいそうだ。」 武の目の前が真っ暗になった。頭がズキズキする。ふと目をやると、「佐藤瞳」と書かれた表札が見えた。武はゆっくりとドアを開けた。そこには瞳の痛々しい姿があった。瞳の細い腕にたくさんの点滴が刺してあった。やはり瞳の顔は青白かった。よく見ると、前よりやせこけているような感じもした。瞳の姿を見ていると、さっきの聞いた事がウソではないことがはっきりと分かった。 「何でなんだ・・・。」 瞳の目がゆっくりと開いた。 「私どこで倒れてた?」 「…公園。」 「そっか。」 瞳はか細い声でそれだけ言って、また目を閉じた。 「運んでくれてありがとう。もう帰って。」 「帰れねえー、お前と一緒にいる。」 | |
武は瞳の骨が折れるくらい瞳を抱きしめた。瞳は目を閉じたままだった。でもありがとうと何回も聞こえような気がした。 数時間後、一人の女の人が瞳の病室へ来た。 「瞳を助けてくれて、どうもありがとうございました。私瞳の母で幸代と言います。瞳のこの状態を見てよく分かると思うのですが、瞳はもう・・・。」 武はただ、うなだれるしかなかった。どうしても信じたくなかった。でもー 「残りの時間、瞳と一緒にいさせてください。お願いします。」 | ![]() |
武は深々と頭を下げた。 「武君と一緒にいたい。お母さん、これが私の最後のお願いだから。許して。」 「お願いします!」 武は手と頭を床につけた。幸代は重い口を開け、こう言った。 「好きにしなさい。でもたまには顔を見せるのよ。さああなた、顔を上げて。」 瞳はとびきりの笑顔で 「ありがとう。」 と母に言った。武は初めて土下座と言うものを体験した。 「お前どこに行きたい?」 「もちろんみんながいるたまりば。言っとくけど私の病気、ぜんぜんたいしたことないんだから。だからおろしてよぅ!」 「ハイハイ。」 | |
武は改めて瞳の強さが分かった。瞳が恥ずかしいから歩きたいと言ったが、武は瞳が心配なのでおぶって歩いた。やはり月はきれいだった。 「きれいだね、月。」 「うん。お前も。」 瞳の顔は真っ赤になった。 「冗談だよ。引っかかってんの、バーカ。」 「もう、ばか。出会った時なんか不良少年だったくせに。」 そんな事を言いながら、病院からたまりばまでの距離を歩いた。 「あゆみー、みんないるか?」 | ![]() |
「いるよー、今日は珍しく全員集合したね。」 「あっ、瞳ちゃんだー!なんだお前らできてんのかよー。みんな瞳ちゃんだよ。」 「よろしく!」 次々と仲間たちが話していく。瞳も大声で 「よろしく!」 と叫んだ。 「みんな、外に出てこいよ。花火しようぜ!」 こうして大人数の花火大会は行われた。瞳はおもいっきり花火を楽しんでいるように見えた。 |