17歳
キーッ。けたたましい音が鳴り響いた。バンー。 車から降りてきた人は青い顔で言った。 「だっ大丈夫ですか?しっかりして下さい。」 そこには真っ赤な物が流れていた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「イヤー、君、ついているね。車にはねられたのにかすり傷と腕の骨1本で済むなんて。 これからは気をつけなさい。命は大切に。あっ、これから通院1ヶ月ね。」 武はムッとした顔で医者を見ていた。正直言って今回は本当にビビッたけど、1ヶ月 病院に通うのは面倒くさい。 そう思いながら武は病院のドアを開けた。すると、武の目の 前を白いワンピースの女の子が横切った。 |
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「瞳!?」 女の子はこちらを見たが、すぐ走ってどこかに行った。 「瞳だったよなあ。」 すると、にょきっとさっきの医者が出てきた。 「そうだよ。あの子は瞳ちゃん。この病院で知らない人はいないよ。薬渡すの忘れてた。 はい、どうぞ。」 武は漠然としていた。その日はすぐに家に帰った。 「何で瞳があの病院で有名人なんだ?」 考えれば考えるほど謎は深まるばかりである。 |
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武は次の日からたまり場と公園に行かなくなった。包帯ぐるぐる巻きは格好悪いからだ。 あの医者、巻きすぎ!と思いながら、通院する日々が続いた。その帰り道、やっぱり武は みんなに会いたくて、たまり場に行こうと思った。差し入れのジュースを買って。 その頃たまり場は・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ギィーというドアの音がした。 「誰?」 あゆみがこう言うと、入ってきた人が 「お前こんなところにいたのか。」 その人の顔を見たとき、あゆみの顔は真っ青になった。 「あゆみ、久しぶり。」 そこに、武の声が聞こえた。 「帰ってよ、帰って。」 そう言ったらその人は帰っていった。 「なあさっきの人、客?」 「キャー!」 あゆみが髪の毛をむしり始めた。そして周りにある物を壁に向かって投げつけた。 「キャー!キャー!キャー!」 「あゆみ、どうしたんだよ。」 武には何がなんだかわからなかった。武はあゆみの体を持って揺すった。 「あゆみ、落ち着け。落ち着け。」 そうしたらあゆみは次に泣き出した。 「お願い、今日は帰って。一人にして。」 武は、何がなんだかがわからず、とりあえず一人にさせてやることにした。 「あいつが来た。もう終わりだ。」 あゆみは力のない声でそう言った。武はあゆみの泣き姿は見たことはあったけど、荒れ姿はなかった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「武くん。」 小さな声で呼ばれた。そこは公園だった。ブランコに目をやると、女の子が手を振っていた。瞳だ。 |
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「おお。」 |
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「待て。一緒にたまり場に来てほしい。あゆみの様子がおかしいんだ。」 瞳なら何とかしてくれると武は信じた。そうしてたまり場に向かいだした。 「あゆみ、いるか?」 部屋の中からは、返事がなかった。 「あゆみはこの部屋から出ないのに・・・・」 「こんなに天気がいいから、星でもみているのかもよ?」 「じゃあ、屋上に行ってみよう。」 その頃、屋上では・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「恐怖の生活が帰ってくる。生きていけない。」 そう言い、あゆみは、履いていた靴を脱ぎ始めた。そしてデッキの前にのり出した。 そのとき武たちが屋上に着いた。 「あゆみ、お前何してんだ。」 「何って、あいつに殺される前に自分で死のうと思って。武、今までありがとね。」 「何言ってんだよ。やめろよ。そんなこと。」 バンっとあゆみがデッキを叩いた。 「あんた、あいつの恐ろしさを知ってる?娘の私に平気で暴力を振るうんだよ。」 あゆみは服を投げ捨てた。あゆみの背中には痛々しい青あざがたくさんあった。 「これでわかるでしょ。これ以上あいつといると殺されるの。」 「甘えないで!」 瞳が大声をあげた。 「死んだら良いことなくなるよ。仲間のみんなに会えなくなるよ。そんな人の為に 死ぬことないよ。」 「あんたに何がわかるのよ。のほほんと生きている人間にそんなこと言われたくない!」 そのとき、瞳も服を脱ぎ捨てた。瞳の背中にも青いポツポツがあった。 「あんただけじゃない。私や武くんやたまり場のみんながあなたのこと見守ってあげる。」 あゆみはデッキから手を離し、瞳に飛びついた。そしてワンワンと泣きだした。 「ありがとう。ずっーと一緒にいて・・・。」 「うん、だって仲間じゃない。」 |
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武はビックリしてしまって、動けなかった。十分後武は二人に服を渡した。 「早く渡してよ、このスケベ!」 あゆみのビンタが鳴り響いた。瞳は顔が真っ赤になっていた。 「今日は帰っていいよ。」 「もうバカなことはしないって約束して。」 「うん、もう大丈夫。武、瞳を送っていってあげてよ。」 武はあゆみに叩かれ、ムッとしていた。 「じゃあ、瞳帰ろう。あゆみ、バイバイ。」 |
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あゆみは瞳が力説してくれて嬉しかった。あそこまでしてくれる人は今までいなかったから。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「お前、すごいな。俺、ビックリしたよ。」 「私の体のこと?」 武は思いだして赤面した。 「そのことじゃねえよ、ばか。とにかくありがとな。」 「仲間っていいね。」 そのとき、瞳がキレイに見えた。 「何見てんの?」 瞳と目が合った。武は慌てて目を逸らし 、 「月!」 と言った。きっと今日見た月は忘れることはないと思った。 |