17歳
武はそれから公園に目をやるようになった。 そしてまたあの女の子に会ったのは、一週間後だった。彼女はまたブランコに乗っていた。 |
|
「今日も暑いね。」 「なんでお前、ブランコ乗っているの?」 彼女はためらいながらも小さな声で、 「好きだから・・・・」 バタッ。彼女が倒れた。顔が青白くなっている。 ・・・・・・・ 「う・・・ん」 女の子が目覚めた。 「大丈夫? あなた貧血で倒れたんだよ。 「よかった・・・。私どうしてここに?」 「あなたはここにいる武に運ばれたの。ちなみに私はあゆみ。」 |
![]() |
「私は瞳。どうもありがとう。」 武は窓の外を眺めていた。 「武、てれてやんの・・・。」 あゆみがふざけて言った。武はあゆみの頭を殴った。 「痛−い。何すんの。・・・でもおもしろかった武の顔。あなたを負ぶってきたとき、あなたと同じくらい青い顔して 『どうしよう』って。私てっきり武が人殺ししたかと思ったよ。」 武は前よりも強くあゆみを殴った。 「アハハハハハハハ・・・。」 瞳はとてもおもしろかった。・・・・二人をうらやましく感じた。 会話がどんどんはずんでいく。 |
|
「瞳はもう私たちの仲間だよ。」 「仲間? そんな・・・。」 「やっぱり嫌よね。こんなわる達の仲間なんて。」 「そんなことない、私うれしい。」 「じゃあ決まりね。」 武はなかなか会話ができなかった。というより、会話に入れなかった。そんなとき、 「武、あんたもしゃべんな。」 「おう。お前、色白くない?」 ちょっと変な質問をしてしまった。・・・バタン、キィー。仲間の次郎が来た。 「オース、これ誰の靴?」 「こんにちは。」 瞳がにっこり笑顔で言った。 |
![]() |
「かわいー。誰、この子?」 「新しい仲間の瞳ちゃんでーす。」 「やったー。やっと女の子が加入してくれたか。」 「ちょっと、どういう意味!」 あゆみが次郎の方をにらんだ。炎がメラメラとみえる。 ・・・・・・・・ それから、歓迎パーティーがひらかれた。いろいろな物を飲んだり、食べたりした。 「そろそろ帰らないと。」 時刻は、八時半。 「まだ早いんじゃないの?」 「ごめんなさい。門限が9時なの。」 「それじゃ武、送ってあげて。」 「おれが行きたーい。」 「あんた私と一緒に留守番。」 「やだー。」 武達はたまり場から出ると、無口になった。さっきまでの騒ぎがうそのようだった。 |
|
そのまま公園に着いた。 「ここでいい。今日は本当に楽しかった。ありがとう。また、たまり場に行ってもいいかな。」 「たぶん良いと思う。それとお前、涼しくなってからブランコに乗った方がいいよ。」 「ありがとう。じゃ、おやすみ。」 武は家に帰りだした。瞳はそんな武の姿をずっと見ていた。 「瞳、どこ行ってたの?」 そういうと瞳の母は瞳に飛びついた。 「心配させないでちょうだい・・・。」 瞳は黙って下を見ていた。 ・・・・・・・ |
![]() |
「東京都新宿○丁目で、17才の少年による殺人事件が起こりました。少年は通りすがりの田中さん(52歳、無職の男性)を殺害。犯行理由は、『ムカついたから』。凶器はバタフ・・・・。」 朝から嫌なニュースを聞いた。テレビなんかつけるんじゃなかった。メディアは何でも17歳に注目する。得なのかもしれないが・・・。外を見回した。相変わらず暑そうだ。 パーティーの日から武は瞳のことばかり気になりだした。 武の日課は公園を見て回ることだ。でもここの所、瞳の姿は見えなかった。 「あいつ今ごろ何やってんだろう。」 そう言ってたまり場に行くのだ。 「このごろ武おとなしいね。どうしちゃったの?」 「オレもよくわからないんだ。」 「そんなぼーっとした様子だったら事故に会うよ。」 武はソファーにうずくまった。 |