17歳
「また、負けちまった。」 お金わずか三百九十円。クーラーのきいたゲームセンターは、 あいかわらずうるさかった。少年はとりあえず外に出ることにした。 セミが耳にまとわりつくように鳴いている。 水曜日の午前十一時。とっくに学校は始まっている時間。 しかし少年は学校に行く気配が感じられない。 ただ時間をつぶしている様だ。 「武ー、久しぶりだな。」 路上に座っている男が少年に声をかけた。 少年は 「おお。」 |
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とだけ言ってその場を去った。少年の名は「武」。学校は高二になってから、まだ二、三回しか行っていない。進級もあやういところだ。武の目つきが険しくなってきた。つぎにすることを決めた様だ。近くのコンビニに入っていった。そして近くのジュースを手に取って、かばんの中に押し込んだ。その他には雑誌などを入れた。武はまた今までと同じ速度で外に歩き出した。 |
慣れたものだ。 そう思った時、 「君、まちなさい。」 店員がこっちへきた。 「かばんの中を見せなさい。」 武は平然とした表情で、ナイフをつき出した。 「このこと黙ってろよな。」 定員は腰をぬかし、その場へ座り込んだ。 そして首をたてに振った。 武はニッと笑って、その場を去った。 今日はバレちまったなあ。と思い、取った物をゴミ箱の中に投げ入れた。 武はたまり場に行った。 |
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たまり場はあきビルの中にある。 「武ー、おかえり。」 そう言って、一人の女が武にとびついた。 名はあゆみという。 「今日早くない?みんなまだ来てないよ。」 あゆみは一日中たまり場にいる。 いく所がないのだ。 そういう17歳だけが、このたまり場にくることができる。 武は近くのソファに倒れこんだ。 ここはクーラーがないから暑い。 「今日いいことなかったでしょ?」 「別に。そんなことない。」 「だって顔にかいてるよ。」 |
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万引きがバレたなんて言うのが恥ずかしいから、違うことをはなそうと武は思った。 「お前よくこんな暑いところにいれるな。」 「本当に暑いよ。そうだ武、どっかつれてってよ。」 「俺、三百九十円しかもってない・・・。」 「エーッ最低。」 時間は十二時を過ぎている。 「じゃ、金つくってくるよ。」 あゆみは一人で外に出たくないらしい。あゆみは笑顔で 「早く戻ってきてね。」 と言った。 武は急いで家に帰った。 家に帰ると誰もいなかった。 すぐに母のサイフを見つけ、三万円抜いた。 「あっ。」 誰かの声がした。 母だった。 武は母をにらみつけ、家を出て行った。 やっぱりそんな金つかいたくない。 | |
なんだか気分が悪かった。 今日は変な一日だ。 ふいと公園の方に目をやると、白いワンピースを着た女の子がブランコをこいでいた。 こんな暑い日に公園にくる子供などいない。 だから武はビックリした。 その女の子はとても白かった。 武がじーっと女の子を見ていると、女の子が武に気づいた。 そしてくすくすと笑い出した。 「なんだ、テメエは。」 女の子は笑うのをやめ、 「ごめんなさい。だってあなた不幸そうなんだもの。」 武はあっけにとられた。 |
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そんなこと言われたのは初めてだったから。 でもちょっと当たっているかもしれない。 だんだん感情的になってきた。 「お前こそおかしいよ。こんな暑い日にブランコなんかこいで。どうにかなってんじゃないの。」 | |
武はこう言い残して、公園を去った。 何だか気持ちがスッとした。 武がたまり場に戻ってきた時、仲間はだいたい来ていた。 「焼肉食べに行こうゼ。」 「武様、すてき!」 ふざけて一人がこう言った。 あゆみは武の顔が笑顔に変わっていて良かったと思った。 焼肉を食べた帰り、公園をのぞいて見たが、もう女の子の姿はなかった。 武は家に帰り、母に 「ごめん。」 そう言って寝た。 母はビックリしていた。 |
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