あとがき
小説について
正直なところは、自分がこの話において何を表現したかったのか、はっきりとは言いにくい個所がたくさん
あり、もっと言ってしまえば小説ってものは、自らの思考の産物であるはずなのに、なかなかなめらかに仕上がらない、
といった感じだ。
内容に関しては、何だか童話のようでもあり、何かと何かが不規則に混じった稚拙なものでもあったかもしれない。
しかし、私にとってこの話は、日常において何かしらと大切に考えてきたことに、[物語]という形を加えて、ふっくら
と焼き上げたようなものなのだ。
人間の心の中ほど、具合によっては暖かい場所は無いと思う。微妙な言葉の触れ具合ひとつで、心の温度も変わって
くるのだから。けれど、赤と青が混ざって紫になるように、そう簡単には心と心は、調和しないものである。
そういった所に関して、井尾田氏とガンマはピッタリと波長が合っている。お互いの色調が、おどろくほど美しく
混色されているのだ。それは、猫と人間を超越していて、二人にしてみればごく自然なことでも、周囲からすると
明らかに、二人を包む空気には濃くて、柔和な、何かがあるのだ。
それが、井尾田氏の詩を愛することへの、万物への理解の力なのか。
ガンマの、生きることへの願望から来る力なのか。いずれにしろ、お互いに自足しているのに、どこか心の隙間に
相手の繊細な感情を、眠らせてあげている。確証も無いけど、不安もあまり無い。
そんなところである。