小説
シンデレラ 作:怪人X
昔々あるところに、それはそれは美しい少女がおりました。彼女の名は「シンデレラ」。 彼女には実の父、義理の母親そして2人の義理の姉がおりました。シンデレラの実母は 彼女が小さかった頃に亡くなってしまったのです。 「シンデレラ!?シンデレラはいないのっ!?」 今日もお姉様からの叱咤が飛びます。 「はい、何でしょうか、お姉様」 いつも慎ましやかなシンデレラは姉達のイジメにも健気に耐えておりました。 「アイロンは掛けたの?!」 「すみません、お姉様。今すぐに・・・」 「もういいわよ、グズなんだから!!」 姉が床を蹴りつけるのと、シンデレラがつぶやくのは、ほぼ同時でした。 「わかってんなら、言うなよ」 「何か言った!?」 「いいえ、何も言っていませんわ、お姉様」 そう、シンデレラは「外面美人」だったのです・・・。しかも「演技派」だったのです・・・。 今彼女が演じているのは「家族に虐げられる美少女」でした。 「今日はお城で王子様のお妃選びがあるのよっ!?ほら、ドレスにアイロンを掛けてちょ うだいっ!!」 いつのまにお城で舞踏会が開かれることが決まったのでしょうか。しかも何故突然王子は 妃が必要になったのでしょう?謎は尽きません。 「はい。あの、お姉様・・・?」 「何よ!!」 「私も舞踏会に行ってもいいのですか?」 「舞踏会に行く!?ドレスも持ってないのに!?」 姉は心底おもしろかったようです。 「そりゃねぇよ。お前らが私のドレスは全部質屋に入れたじゃねぇか・・・」 心の中ではそう思いながらも、困ったように微笑んで 「でもお父様が新しいドレスを買ってくださったから・・・」 とつぶやきました。 そうお父様はまだ生きていたのです。しかしその直後、キキーッ!という音とドーン!!と いう音が響きました。そうその時、お父様は亡くなってしまったのです。 「けっこう、あっさり死んだわねぇ・・・」 シンデレラと姉は、ほぼ同時につぶやきました。 「で?誰がドレスをくれたですって!?」 「そんなこと言いましたか?お姉様・・・」 「お父様が、とか行ったでしょう?」 「もうずっと前に亡くなってるのに?」 いつのまにか彼女たちの中では父は、ずっと前に亡くなっていることになったようです。 「そうね。とにかく、ドレスがないなら舞踏会には連れていけないわ。家で留守番していな さいねっ!」 そう言うと2人の姉と継母は、舞踏会に出かけて行きました。家には1人シンデレラだけが 残されてしまいました。しかし彼女はいそいそと床に魔法陣を描き始め、ついには魔女を呼 び出してしまいました。 「な、何をする!!」 「何でもいいから早くドレスを出しなさいよ」 首を絞められては、さすがの魔女も言うことを聞かざるを得ません。 「よいか?このドレスは・・・」 「12時には消えるんでしょ?知ってるわよ、そんなの・・・」 じゃぁ行ってきまぁーす、の1言が聞こえる頃には、彼女の姿はすでにはるか彼方だったのです。 「ふぅ、やっと着いたわ・・・」 シンデレラは城の入り口でつぶやきました。すると衛兵が、 「お嬢さん、君も王子様のお妃候補かい?」 「えぇ、そうなんです・・・」 「そうか、でも、残念だったねぇ・・・」 「え?」 「さっきお妃様は決まってしまったんだよ」 王子の妃に決まったのはシンデレラが名前すらも知らない娘でした。 おしまい。 「私が主役じゃなかったのーっ!?今まで何のために猫被ってきたのよーっ!!」(シンデレラ) 本当に、完。 |
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