余りにも強い日差しだった。
わずかに残しておいた水もついさっき飲み干してしまい、喉はもうからからである。その上歩けども歩けども変わることのない黄色の気色。目的地は一向に見えてこない。雲一つない青空が虚しかった。
もう体力、精神共に限界だ。しかし男はそれでも立ち止まらなかった。男の名はリハ=クレイモア。トレジャーハントを生業とし、その道の人間には『朱眼のリハ』と呼ばれ恐れられている。
その彼が今回目指すのは、太古の昔に滅びたと言われる王国の都、サラのミラージュパレス。王族が暮らしていたとされるその城の財宝が狙いである。
この男は危険な道を好んで選ぶ傾向がある。ぎりぎりの快感というのに魅せられているらしい。どんなにまずい状況にあっても、口の端に笑みを浮かべている。そんな男であるリハが、今はかなり険しい表情をしていた。
(やはりあれは単なるおとぎ話か…?)
疲れも手伝って、いつになく弱気になっているようだ。
(こんなところでくたばってたまるか…ってもう町にも戻れんしなぁ。どうしたもんか)
ついに足が止まった。四日間、歩き続けたその足が。
熱い風が通りすぎると、黄金の砂粒が舞った。
―――『千年砂漠』…人はそう呼んだ。
この砂漠は世界の果てへと繋がっている。足を踏み入れたが最後、二度と戻ってこれない、と。その地獄の熱砂の真ん中に、超古代語で『楽園』を意味する都、サラは栄えていたのだ、と。
確かな情報などあるはずもない。今まで何人もの冒険家が挑み、誰一人として帰ってきた者はいないのだから。サラは幻の都、蜃気楼(ミラージュ)と呼ばれるようになり、最近はおとぎ話という程度で伝えられているのだ。
リハはこういう話が大好きだった。いかつい外見とは裏腹に、意外と子供っぽい所がある。まぁ、トレジャーハンターなどというのをやっている人間は皆、多かれ少なかれそういう部分を持っているのかもしれない。
(さぁ、どうする)
リハは自分に問いかけながら、前方に目を凝らした。
その時だ。
「…あれは…?」
鋭い朱の瞳が、何かを捉えた。
|