学校の骸骨が踊る理由     by夢幻まほ  
 

気が付けばオレは暗闇の中にいた。光を探して歩いているのだが、まったくもって何もない。
「もう歩けねぇよ。どこなんだここはっ!」
ぼぉうっ。いきなり目の前に銀の炎が現れた。
「うわっ。何だ!?」
炎が形を変えて狐になる。
「うろちょろ動き回りよって探したではないか」
「きっ、狐がしゃべった!」
狐は不愉快そうにオレをにらんだ。
「ただの狐ではない。水先案内人の狐じゃ」
「水先案内人?」
「そうじゃ。おまえさんのように死んだ人間を御方様のところへ連れていってやるのさ」
「えっ。オレのようにって、つまりオレは死んだってことか?」
「ほぉう。死んだことを覚えておらんのか。まぁしかたあるまい、見事に車に吹っ飛ばされてお
ったからなぁ」
「車に吹っ飛ばされたぁ?」
「あぁ。急いで道路を渡ろうとして。よく飛んどったぞ」
思い出した!そうだ。寝坊して急いで学校へ行こうとして…。
「思い出したようじゃのう」
「あぁ。でもおまえ何だってそんなに嬉しそうなんだよ」
「いやぁ。交通事故っていうのは出血多量で死ぬことは多くても、マンガのように吹っ飛んで一
瞬死っていうのは珍しいからのう」
「人の不幸を笑うなっ」
「不幸?いいではないか、一瞬死のほうが苦しまずに死ねたろ」
「オレは死にたくないっ」
「おぉ。こんな事を話してる場合ではない。早く御方様のところへ行かねば」
涼しい顔して歩き始める。この狐いい性格していやがる。
「ほれ、あれが御方様の社だ」
狐が尻尾で示す先には鳥居があり、神社らしきものが建っている。社に入り、狐に奥にみすがか
かっている部屋へ連れていかれる。
「御方様連れてまいりました」
「ご苦労であった。その方、名と年は?」
「鷹峰 磋玖矢 十六歳」
「十六か、だがしかたあるまい。その方の罰を言いわたす」
「ちょ、ちょっと待ってください。罰って何のことですか」
「ん。銀に聞いておらぬのか。親よりも早く死んだ罰だ」
「別に自殺したわけじゃありませんよ」
「自殺の罪はもっと重い。しかし親より早く死に親を悲しませた罪も重い。しかもそなたの事故
は自分に非がある」
「そんなっ」
「まぁ、そなたは賽の河原で石積みという年ではないしの、それにずっとではかわいそうだ。よ
し『白骨死体は踊る』の刑にしよう」
「な、何ですかそれはっ」
「そなたも聞いたことがあろう?学校の骸骨が動くという話は」
「ありますけど」
「そなたがその骸骨となり、十六人の人を心から驚かせれば成仏できるというわけじゃ」
「そんなむちゃくちゃな刑聞いたことありませんよ」
「そうか?おもしろいであろう?」
「おもしろくありませんよっ」
「それでは小学校に送ってやろう」
「嫌ですよっ。そんな刑…うわぁぁぁぁぁぁぁ」
御方様のみすや銀狐が遠くなり、目の前が真っ暗になる。ぱっと視界が開けた。そこは理科室だ
った。
「何なんだよ、今度は」
?何かが変だ。ふと、自分の体を見下ろした。
「!ほ、骨!?」
そうオレの体は全身骨になっていた。
「十六人早く驚かせればよいのう。では健闘を祈る」
「そんなっ。ちょっと待ってくれっ。おいっ」

ある学校に理科室の骸骨が動くという噂がたった。あと十三人。
みんなオレに驚いてくれ〜!
<完>


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