56・57合併号

 

  新たなスタート   兵庫県立宝塚東高等学校  吉田 英一

      

 この春、定時制の川西から、宝塚東に転勤しました。

朝夕のHR、休日・放課後のクラブ。こうした当たり前のことが、全日制が久しぶりの僕には重荷になり、「化学」や「科学」について考える余裕もなくなりました。

 また、7年前まで何の疑問もなく反復していた授業に関しても、比較的自由に教材の選べた定時制を通過した今、何か違和感をもちます。

 NO3-,CO32-,SO42-,PO43-,CH3COO-,・・・。あらゆる教科目の中で最も意味のない暗記に思え、何の抵抗もなく授業を受けているおとなしい生徒の方が時に異常に見えます。「考えない生徒が多い」のではなく、「考える生徒が生き残れない」のかもしれません。

 最近は、「化学」という1冊の分厚い教科書を作ること自体に無理があるのではとも思っています。高校で物化生地の3~4科目を勉強していた昔と違い、下手をすると1科目しか選択しない現状を考えると、物化生地という学問上の古い「なわばり」を捨て、たとえば、「科学の実験」、「科学の歴史」、「科学の利用」、「科学のしくみ」などという新教科に分け直したほうがいいかもしれません。ただ、一般市民向きに編集すると、生物や地学は残るけど、化学はほとんど消えてしまうような気もします。

 化学は面白くない。化学物質を覚えたりするのは一部のオタクがすること。ふつうの人々の目はそうなのかもしれません。実験にしても、それがただ楽しさや驚きを求めるだけのもので、化学の理解につながるものでないのなら、昔と違って、もっとすごいモノがいくらでもあるし、「化学」としてやる必要もないような気がします。

 ・・・・・・。

 化学は面白くない。

 全日制に戻った今、そこから、ゼロから、スタートしてみようと思います。

 

第56回研究会

 

日 時 7月 8日(第2土曜日) PM2:00~6:30

場 所 兵庫県立御影高等学校

参加者 北川,安岡(御影),吉田(宝塚東),芝崎(武庫川女子大付属),浅井(尼崎西),木田(国際環境専門),内田(東洋大学付属),中澤(須磨東)、高田(舞子)

 

1.連絡依頼事項

(1)今後の例会の予定

 

 次回(57回)

  日 時:8月7日(月) PM1:00~

  場 所:国際環境専門学校   ※通常と異なります。注意して下さい。

  内 容:環境実験講座への参加

      「mol」の授業の研究協議

9月の定例研究会は、青少年の科学の祭典と重なるため行いません。

 

 58回研究会

  日 時:10月14日(第2土曜日) PM2:00~

  場 所:神戸大学 発達科学部

 

(2)平成12年度原子力体験セミナー・兵庫コース参加者募集の依頼

  開催日:8月23日(水)~24(木)

  場 所:兵庫県立先端科学技術支援センター

       〒678-1205 赤穂郡上郡町光都3丁目1番1号

       TEL 07915-8-1100

  内 容:8月23日 講義 「放射線の人体影響」

       実験 「はかるくん」を用いた放射線・放射能の測定

       自然放射線の測定,ラドン温泉の放射線測定)

      24日 実験 手作り教材による放射線の観察

       簡易型GMカウンタキットによるβ線の測定

       簡易型放電箱によるα線の観察

       簡易型霧箱による放射線飛跡の観察

       講義 「エネルギー問題について」

  申込先:兵庫県立姫路西高等学校内

      兵庫県立高等学校教育研究会理科部会 事務局

       〒670-0844 姫路市北八代2丁目1番33号

       TEL0792-81-6621  FAX0792-81-6623

(3)案 内

・平成12年度高等学校中学校化学研究発表会作品募集(日本化学会近畿支部)

・第2回 近畿地区 化学教育研究発表会 実施要項

 上記についての詳しい要項は、高田(舞子高等学校)が持っております。ご連絡いただければFAXにて送らせていただきます。

 

2.研究協議

(1)環境実験(安岡)

1.身のまわりの家電製品の消費電力を測ってみよう

2.電気料金を計算してみよう

3.水を浄化する微生物たち−活性汚泥を利用した水の浄化−

4.合成洗剤の残留テスト

 8月7日(月)に国際環境専門学校での環境実験講座で行う環境実験の内容説明があった。今後、総合的な学習などで環境が取り上げられることが多くなると思うが、身近なものを題材として扱ったこれらの実験は、生徒の興味を引きだし、環境について考えさせるものである。

 

※実験の詳細については、環境実験講座の様子とともに次号に掲載します。

 

実験講座 全体指揮  安岡(御影)

実験担当者

 1,2…内田(東洋大付属),吉田(宝塚東)

 3……北川(御影),高田(舞子)

 4……芝崎(武庫川女子大付属),浅井(尼崎西)

実験補助   栗岡(加古川北),中澤(須磨東),土井(姫路西)

予備実験 7月23日(日)10:00~13:00 御影高校

     8月 5日(土)11:00~13:00 国際環境専門学校

 

(2)ハイポ過冷却

 チオ硫酸ナトリウム5水和物を用いた溶液の凝固点降下と過冷却現象を確認する実験であった。過冷却の状態にあるハイポにハイポのかれら1粒を入れると、みるみると固体へ変化していく様子は、とても見応えがあった。生徒実験で行った際も、生徒の反応は非常によかったとのことである。この実験の扱われた過冷却現象を協議する中で、TV「伊東家の食卓」が話題となった。このテレビ番組で扱われているものの中には、授業の題材となるものも多くある。例えば、今回の過冷却と関係するものとして、ペットボトルの水を短時間で凍らせる方法が紹介されている。現在は、本も出版されている。

 

(3)わかりやすい「mol」の授業

 前回から引き続いて「mol」の授業についての意見交換がなされた。

 

 原子量と物質量molの指導(北川)

 原子量の歴史的過程や今日の相対値による定義を取りあえず保留し、陽子の質量=中性子の質量=1、電子の質量を当面無視して考え、原子の質量数で「原子1個の質量を表す」方法での指導法が紹介された。また、ここでは原子量のしっかりとした定義も従来の「相対値」ではなく物理で扱う「原子質量単位(unit)」で扱う考え方も紹介された。

 他に、アボガドロ定数6.02×1023の値の大きさを実感させる方法や簡単な実験を導入として「mol」の授業に発展させていく方法等についても意見交換がなされた。

 

(4)その他(雑談)

・理科的要素が多く含まれた昔のおもちゃ(樟脳船、竹鉄砲など)