美術部への期待
近年、富に民間における文化活動が活発になる中で高校美術部への期待が大きくなってきている。コミュニティーカレッジを始めとする各種美術教室はどこも盛況で、絵画、陶芸、七宝焼等熱心に取り組まれている。こうした芸術活動が個人の趣味としてだけでなく、公共団体や企業の理解と関心により“公共の場”で活躍する機会が多くなってきている。
ここ数年間を振り返り、活動の一端を紹介したい。
1.平成4年「緑の日」にちなんで淡路島緑町で開催されるグリーンフェアの特設ステージを飾る壁画(ベニヤ20枚横9.1×3.6)の制作。「光と水と緑の町づくり」という町のテーマに沿ってデザインしペンキで仕上げ毎年祭典の舞台を飾り活用されている。
2.平成5年 ギネスブック掲載のもの 「ジャンボ鯉のぼり」の制作
前年に続く緑町よりの依頼で長さ20m胴の直径5m口の直径2mのジャンボ鯉がメーカーより届き、南北校舎を繋ぐ3階渡り廊下に広げて、部員25名が2週間かけて仕上げるごとに10人程度が内側に入りペンキのくっつきをはがすなど苦労の連続で完成したときの喜びは例えようもなく充実感に満ち溢れていた、この様子はNHKでも放映された。
3.平成7年 パッカー車への絵付け
美原町の清掃業者よりの依頼で新車のパッカー車前面に塗料が付着しやすいようにサンドペーパー掛けを施し鉛筆で下絵付けをして、車用塗料で塗りこむ。垂直な車体には、シンナーを混ぜると流れやすく、閉口するも工夫により慣れる。10名程で1週間で完成。.現在も派手な車体で町を走っており楽しいものである
4 平成8年郷土部の舞台幕の制作
海外公演や国立劇場出演の実績を誇る本校郷土部より依頼で、大きさの異なる舞台幕
(ヨコ12mタテ4mと8×4m)「老松」に取り組む。美術室の机を片付け床に絵の具がつかないようにベニヤ板26枚を敷き詰めガムテープで接続、家庭クラブで縫い合わせてもらった布を両面テープで固定。チョークで下絵つけしてネオカラーで塗りこむ。
5、平成9年 防波堤壁面に「海の生物」をペインティング
文部省の地域教育活性化事業に県で唯一南淡町が指定され50万の予算で取り掛かる。町内の小中学校から希望者が70名と、各校の美術図工担当8名が長さ100m×3mのコンクリート壁画に取り組んだ。170gの白ペイント7カン他に主要色1カンずつ使用
@ コンクリート壁の水洗い A白ペンキで地塗り Bチョークで下絵つけ C水性ペンキで塗りこみ Dコーティング加工
初日午前製作過程の説明の後コンクリート壁の水洗いをし、白ペンキで下塗りを兼ね
刷毛とペンキに慣れさせる。午後中高の美術部員にサンプル作品を間隔を置いて描かせる。
2日目より総勢70名で梯子15台を動員して塗りこむ。最終日は中高生のみで手直しを仕上げる。1週間で完成する。予想以外の出来栄えに長く保存されることとなりコーティング加工を専門業者に依頼。阿万海水浴場の名物となっている。
6、平成10年 郷土部の舞台幕の制作
「波」(ヨコ12×タテ4mと8×4m)空色の布地にシルク版(白と藍の2版)で刷り込む。
ネオカラーの顔料とバインダーを使用する。
7、平成11年 だんじり唄舞台幕の制作
淡路文化会館よりの依頼で島内の代表が地域に伝わるだんじり唄を疲労する恒例行事「淡路だんじり唄コンクール」の舞台を彩る垂れ幕(ヨコ8m×タテ4m)に取り組んだ。淡路島に古くから伝わる布団・船・使いだんじりと、それぞれの坦ぎ手50人程度を描きこむ。ネオカラーを使い20人で1週間で仕上がる。
以上のような共同制作を春休みの活動として実施している。平常の美術部活動に加え、コンクリート・布・ベニヤ・鉄等、特殊で大きなスペースに立ち向かうことにより、多くの試練に遭遇、工夫をしながら新たな創造の歓びを見出しており、意義深い体験活動であると思っている。
淡路の他の高校も企業や商店街とタイアップし、外壁やシャッターへの絵付け以来が相次ぎ、じかんを工夫しながら、ボランティア活動に取り組んでいる。
8、歓迎アーチとデコレーション制作
元来、淡路は派手な土地柄のせいか、学校祭の歓迎アーチ(ベニア50枚を使っての)
凱旋門)やデコレーション(竹を使っての約10mの高さの立体造形)が美術部員を中心に制作されてきた。最近でこそ、経済的負担、時間的制限、それにダイオキシン問題による焼却不能等で規模の縮小を余儀なくされているが、参観者の目をひきつけており、伝統はまもってゆきたいと思っている。