揺 籃(ようらん) 08.05.27







葉っぱのゆりかご


 南但馬自然学校の本館前には、屋根より高い大きなケヤキがあり、この木の下は生活棟に続く通路なっているため、上の写真のようにいつも子どもたちでにぎわってます。

 この季節、ヤケキの下の地面をよく見ると、クルリッと巻かれた葉っぱが落ちていることがあります。辺りを満遍(まんべん)なく探すと、こんなにたくさん見つけることができました。

 いったいこれは何でしょう? だれかがイタズラでもしたのでしょうか? 実は、オトシブミという昆虫の仲間が中に卵を生みつけ、枝から切り離し地面に落としたもので、孵化(ふか)をした幼虫はこの葉っぱを食べて成長します。つまり、巻かれた葉っぱは“ゆりかご兼(けん)食べ物”ということですね。

 葉っぱを、手のひらの上で転がしていると、ポロッと黒いゴミのようなものが出てきました。その小さな小さなゴミをよく見ると、なんと足が付いています。急いで事務室に持ち帰り実体顕微鏡(じったいけんびきょう)をのぞいてみると、体長約6o、ゾウの鼻のような長い口を持った虫が、気絶(きぜつ)でもしたのかピクリとも動かず体を丸めています。
 この虫をケヤキの葉っぱの上に乗せてやると、ハッと気が付いたように動き始めました。しかし、見れば見るほど奇妙(きみょう)な虫です。筋が入った黒光りする体。長い口の先に“くの字”に付いているのは触角でしょうか。足の先には毛をたくわえ、まるで滑り止めのスパイクを履(は)いているようです。さっそく、この虫のことを調べようと図鑑を開いたところ、はっきり名前はわかりませんでしたが、どうやらオトシブミではないようです。

 次に、この虫が出てきたゆりかごの中をのぞいてみることにしました。慎重(しんちょう)に少しずつほぐしていくと、縦に二つ折りにして、葉先(はさき)から固くしっかり巻いてありました。葉っぱを広げると、中には小さな黄色い粒が1つだけ入っています。あまりにも小さいので、これも実体顕微鏡を使うことにしました。
 息を呑(の)んでのぞくと・・・するとどうでしょう、直径約1oの黄色いカプセルのような美しい楕円形(だえんけい)の球体が浮かび上がりました。これはおそらく葉っぱに生みつけられた卵でしょう。

 ここで、謎が生まれました。葉っぱの中の卵とあの黒い虫は、いったいどのような関係でしょう。親子でしょうか? それとも、黒い虫が偶然(ぐうぜん)ゆりかごの中に入っていただけなのでしょうか?
 そこで、この謎を解明するために、本校のスタッフが集めた葉っぱを飼育ケースに入れて観察をしています。さあ、ゆりかごから誕生するのはどんな虫でしょうか。その日が待ち遠しいこの頃です。

文責 増田 克也

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