ウソ (亜種 アカウソ) 07.01.09





おちょぼ口の大食漢



 みなさんは“ウソ”という野鳥をご存じですか。130円切手に印刷されている野鳥と言えばイメージが浮かぶ方もあるでしょう。暖かい季節には、高山で生活しているので、なかなか目にすることはありませんが、冬になると南但馬自然学校にも彼らがやって来ます。

 散策路を歩いていると「フィ〜フィ〜」口笛を吹くような鳴き声が聞こえてきます。小さく慎ましい声なので「まだ遠くだな」と思っていると、すぐ目の前でお食事中です。丸っこい身体につぶらな瞳、首に巻いた鮮やかな赤いスカーフがよく似合っています。赤いスカーフはオスのトレードマーク。一方、メスはぐっとシックな色合いです。

 私がすぐ近くで見ているにもかかわらず、あまり気にする様子もなく、丸っこい身体を、伸ばせるだけ伸ばして、一心不乱に食べています。おちょぼ口の周りにはいっぱい食べかすを付けて、時折、枝でこそぎ落としてはまた食べ始めます。ウソが集まる木の下には食べかすがたくさん散らかり、テーブルマナーは最低です。「おいおい、おまえたち、もう少しきれいに食べろよ」私の声が聞こえたのか、地面に下りてある程度は食べていきます。なかなか憎めないウソたちです。

 そんなウソも人間には嫌われ者です。それは、サクラの花芽を食べてしまうからです。サクラの開花を心待ちにしている人々にとってはまさに宿敵。そのため、時には駆除されてしまうことさえあります。南但馬自然学校では、タニウツギコバノミツバツツジを食べ、これらがなくなると、サクラの花芽に手を出しています。いわばサクラはウソたちの非常食ですね。
 ウソは害鳥扱いされる一方、「神様のお使い」ともされています。「災いを転じて嘘(ウソ)とする」
ということから、各地の神社で、ウソをかたどった木彫りが厄払いのお守りとして売られています。
 人間の都合のいいように扱われるウソたちは、まったく気の毒なことです。そんなことを知ってか知らずでか、南但馬自然学校のウソたちは寒さをものともせず、丸い身体をより丸くして今日も食事に精を出しています

文責 増田 克也
  
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