ショウジョウバカマ 07.04.03





妖精のドレス



 今年も“ショウジョウバカマ”が咲きました。山際に続く小径の法面に線香花火のような花をいくつも開いています。ここには、つぼみを開きかけたものや、花茎をのぞかせたものまで数えると、20株ほどのショウジョウバカマが見られ、一目で成長過程を観察できる絶好の場所です。しかし、花の色が山肌に馴染むためか、行き来する人たちはあまり気に留めていないようです。
 昼間はひっそりとたたずむショウジョウバカマも、陽が傾き始めると神秘的なピンク色に変わり始めます。透き通りそうな花びらは、山の妖精が今宵の舞踏会にまとうドレスのようです。

 ところで、毎年、花を見るたびに、この「ショウジョウバカマ」という長い名前が気になっていたので調べてみました。ショウジョウ(猩々)とは伝説上の動物。お酒が大好きでいつも赤い顔をしていることから、花の赤とかけられたようです。それに葉っぱがハカマ(袴)のように見えるので「ショウジョウバカマ」となったそうです。

 上の写真を撮影して数日後、再び花の様子を伺いに行ってみました。するとどうでしょう、茎がぐ〜んと伸びて以前の倍ほどになっていました。茎は最終的に60p以上にもなるそうです。これは風に乗せて種をより遠くまで散布するためとは、自然の巧みな仕組みに感心するばかりです。これまで花が終わると、いつの間にかショウジョウバカマの存在を忘れ去っていましたが、今年は是非、種を飛ばすシーンを見てみたいものです。

 撮影を終えた帰り道で、「チュルチュル、フィ〜」と聞こえる声に足を止めました。遠くで“ベニマシコ(メス)”が残り少ないセイタカアワダチソウの穂をついばんでいます。こちらは草の芽でも食べたのでしょう、くちばしに青いものを付けたオスの姿も見えました。冬にはこの地で見られなかったベニマシコ。どうやら、北国の繁殖地へ戻る途中のようです。

 ショウジョウバカマやベニマシコに心を奪われていると、陽は西の山に吸い込まそうになっていました。最後に斜面の高いところから花を下に向け、「私を撮って」と言わんばかりの“キンキマメザクラ”の白い花びらにフラッシュを光らせ帰路に着きました。

文責 増田 克也

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