セリバオウレン 08.04.01




白い花咲く胃腸薬



 暗い山肌に、セリバオウレンが咲きました。草丈10センチほどの白い花は、ほとんど陽が当たらない湿った場所を選ぶようにひっそりと咲いています。ゆらゆらと時折届く木漏れ日(こもれび)が、闇の中から花を浮かび上がらせ、まるで別世界に迷い込んだような神秘的な気分にさせてくれます。
 暗く目に付きにくい場所にあっても、ニホンミツバチを始め昆虫たちは、何度もやってきては蜜を求めていました。

 セリバオウレンとは聞き慣れない名前ですが、その由来を調べてみると、セリバオウレンの「セリバ」は葉の形がセリの葉に似ていることから、また、オウレンは漢字で“黄連”と書き、櫛状(くしじょう)に連なる黄色い根を持つことから名付けられたそうです。

 このセリバオウレンは薬草で、お腹の薬として用いられます。南但馬自然学校のおとなり、兵庫県丹波地方では江戸時代から長い間このセリバオウレンが、「タンバオウレン」という名前で栽培されています。
 そこで、実際に胃腸薬に使われているのか、町のドラッグストアで調べてみると、同じ胃腸薬でも粉末(ふんまつ)や錠剤(じょうざい)の成分表示には「オウレン」の文字は見つけられませんでしたが、小瓶(こびん)に入れられた液体の胃腸薬の多くに、オウレンが使われていました。
 この液体胃腸薬の成分表示にも「オウレンチンキ」と書いてあります。オウレンチンキの「チンキ」とはアルコールなどを使って抽出(ちゅうしゅつ)したエキスのことです。

 みなさんもドラッグストアやコンビニに行かれたときに、液体胃腸薬の成分表示をのぞいて「オウレン」の文字を探してみてください。茶色い小瓶の中に、あの暗い山肌に浮かび上がる神秘的な白い花のエキスが入っているとは意外に思いますが、今度、液体胃腸薬のお世話になるときには、オウレンの白い花を思い浮かべながら飲むとよく効きそうな気がします。

文責 増田 克也

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