センブリ 06.10.24




秋に咲く白い花


 白い“センブリ”の花が咲きました。散策道くまコースやきつねコースの法面に小さな花を咲かせています。秋の赤色や黄色の鮮やかな紅葉の中で異彩を放つ白い花は、見れば見るほど愛らしく気持ちを和ませてくれます。
 センブリはお腹の薬になることで有名です。しかしその味は大変苦く、試しに葉っぱを一枚かじってみると、喉の奥に染みついたような苦味がいつまでも続きます。それもそのはず、センブリの名前は「お湯に浸して千回振り出してもまだ苦い」というこの味に由来したものです。

 「センブリって知ってる?」子どもたちに聞いてみると、私の意に反して多くの子どもたちがよく知っていました。不思議に思い訳を尋ねてみると、テレビのバラエティー番組でセンブリ茶を罰ゲームとして用いているらしいのです。思いがけないことから子どもたちの知るところとなったようです。でも、苦〜いセンブリ茶がこんなにかわいい花を咲かせる植物からできていることには驚いたようでした。

 散策道しかコースにはセンブリによく似た白い花を付けた、“アケボノソウ”が咲いています。この花は草丈30pくらいでセンブリの倍ほどあります。秋になるとアケボノソウが好む湿った場所を注意して探すのですが、南但馬自然学校では毎年見ることはできません。今年は運良くしかコースの目立つ場所に咲いてくれたので、子どもたちと観察することができました。

 花の中をルーペでのぞき込むと、吸い込まれそうなほど神秘的な模様をしています。4から5枚の白い花びらには、それぞれ2つの黄色い丸模様があり、その先には紫色の小さなドットがいくつも散りばめられています。昔の人は、この黄色い丸模様を、白々と明けゆく空に残る星にみたて“アケボノソウ”と命名したそうです。先人はこの花の中に小宇宙をみいだしていたのでしょう。
 アケボノソウの金星に魅せられたのは人間だけではありません。昆虫たちもくびったけです。実はこの金星はアケボノソウの“蜜線”なのです。写真を拡大すれば、蜜が染み出している様子がわかりますね。こちらの花では、5枚の花びらそれぞれにアリがとりつき一心に蜜をなめていました

 センブリやアケボノソウの花が終わると、南但馬自然学校の秋はいっそう深まりをみせます。今度はどんな色の花に出会えるのでしょう。楽しみは尽きないこの頃です。

文責 増田 克也

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