オオルリ 07.07.24





展望台で子育て開始



 まだ梅雨明けやらぬ南但馬自然学校ですが、数日前から鳴き始めたセミの声だけが間もなく訪れる夏を予感させます。朝来山の野鳥たちのほとんどは、梅雨入り前に子育てを終え、今は訪れる暑い夏を乗り切るために体力を蓄えていることでしょう。しかし、どこの世界にも、のんびり屋はいるものです。今週の「自然のページ」は、梅雨明け間近のこの時季に子育てを始めた“オオルリ”をご紹介しましょう。
 今から1ヶ月以上も前のことです。展望台の梁にゴミのようなものがあることに気づきました。近づいてみるとゴミに見えたのはコケでした。誰かがいたずらをしたようにコケが薄く積まれています。「小鳥が巣作りを始めたな・・・」と、楽しみにしていましたが、その後、何日経っても変化がなく、ここでの巣作りは途中で中止してしまいました。
 最近になって、本校のスタッフが「展望台に小鳥がいるよ」と教えてくれました。そっと見に行くと、あの中止したはずの巣にコケがうずたかく積み上げられ、その中に頭と尾羽だけをのぞかせたオオルリが不安そうにこちらを見つめていました。どうやらメスが卵を温めているようです。その日から、オオルリを刺激しないように観察を始めることにしました。



観察を始めて数日が経ちました。ほぼ毎日のように巣の様子を見に行きましたが、メスはいつも同じポーズで微動だにせず一心に抱卵しています。

〜観察8日目〜
いつもいるはずのメスの姿が見えず、巣はもぬけの殻です。17分が経過しました。「巣を放棄してしまったか」ふといやな思いがよぎります。その後しばらくして、谷の方から「チャ、チャッ」と、ヒタキ(オオルリはスズメ目ヒタキ科です)の仲間特有の声が聞こえ、後ろを振り向くと近くの手すりにメスがとまっています。それからすぐに巣の中に戻り抱卵を始めました。

〜観察10日目〜
この日初めてオスが姿を見せました。近くの枯松にとまり小声でさえずっています。よく見るとくちばしには小さな虫をくわえています。卵がふ化した形跡はありませんので、きっとメスへのプレゼントでしょう。邪魔をしないよう早々に退散することにしました。

〜観察11日目〜
この日、霧雨の展望台にはたくさんのお客さんがありました。それでもメスはじっと我慢して卵を抱き続けます。ヒノキの梢ではオスが心配そうにさえずり始めました。朝来山登山の途中で展望台を訪れられたみなさんに、オオルリという野鳥の解説やこれまでの経緯をお話しすると「小鳥の邪魔になるから早く行こう!」と自主的に展望台を後にされました。



 オオルリの子育ては、展望台を訪れるみなさんのご理解とご協力で、今のところは順調に進んでいるようです。間もなくヒナも誕生することでしょう。後日、「自然のページ」をご覧いただいているみなさんに、うれしい報告ができることを願いつつ、引き続き展望台のオオルリたちを見守っていきたいと思います。

文責 増田 克也

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