ミスミソウ 08.04.15




殿さまのミスミソウ !?



 里のサクラが満開になる頃、南但馬自然学校の朝来山ではミスミソウが慎(つつ)ましい小さな花を咲かせます。朝来山にミスミソウの存在を知ったのは随分(ずいぶん)前のことですが、毎年、この時季になると花の様子が気になり始めます。今年も花を咲かせているでしょうか。そこで、ミスミソウを訪ねて春の朝来山へ足を向けました。

 つづら折りの登山道を、何度も汗をぬぐいながら登っていくと、ありましたありました。登山道の山側、腰の高さほどに、直径1センチ程度の白い花をちょこんとこちらに向けて迎えてくれました。
 更に進むとスギの落ち葉の間から、ぽつんぽつんと白い小さな点が見え隠れしています。おっと、危うく見過ごすところでした。これも立派なミスミソウです。こちらでは、里のサクラに負けじと花びらをピンク色に染めた花が、名前の由来(ゆらい)となった、3つの角(すみ)を持つ葉っぱをしっかりと見せてくれした。
 朝来山展望台にたどり着き、山頂へと続く尾根道を西に進むと、木の根っこにできた洞(ほら)にもミスミソウが咲いています。この日は天気がよく数名のハイカーに出会いましたが、傍(かたわ)らにひっそりと咲く小さな花には誰も気づいていない様子でした。

 この時季、朝来山では日当たりのいい斜面のあちらこちらで、ミスミソウの白い花が点々と見られます。以前同行した植物の先生によると、これほど多くのミスミソウが見られるのは、この辺りの山では珍しいということでしたが、「なぜ朝来山にはミスミソウが多いのだろう」といつも不思議に感じていました。
 このことを地元の郷土史家の方にお話したところ、耳寄りな情報を伺うことができました。その昔、朝来山の西側には竹田城の殿さまの命により、野草園が造られていたという文献(ぶんけん)が残っているそうです。その名残で今でもミスミソウが多いのではないかということでした。  
 今ここに咲いているミスミソウを、竹田城の殿さまも愛(め)でていたのでしょうか。尾根に咲く白い花を見つめながら思いは遥か昔を駆けめぐるのでした。

文責 増田 克也

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