ミサゴ 07.11.20




円山川のグライダー



 先日、近畿地方に木枯らし1号が吹き、当地にも冬が一歩一歩近づいています。寒くなると北国から渡り鳥がやって来ます。そこで、南但馬自然学校から西へ3q下り、本校を訪れる子どもたちが水遊びなどでよく利用する竹田地区の円山川にカモを探しに行ってみました。

 早速、ポイントに向かい見回しましたが、カモの姿はまばらで期待したほどではありませんでした。「ふ〜うぅ」溜息をひとつ。澄みきった青空の彼方に目をやると、下流から見慣れないシルエットの鳥がこちらに向かって飛んできます。特徴があるその姿にミサゴではないかと思いましたが、にわかには信じられませんでした。

 ミサゴは海岸や河口、大きな湖に棲み主に魚を捕らえて食べるタカの仲間で、兵庫県レッドデータAランク、環境省レッドデータ準絶滅危惧に指定されている野鳥です。円山川では下流域に生息しますが、上流域で見られるのは極めて希なことです。

 シルエットはこちらにどんどん近づき、真上を見上げるほどになりました。「白いお腹に黒い模様」やっぱりミサゴに間違いありません。その後、上流から下流へ二度往復し、時には水中に獲物を見つけたのかホバリング(空中停止飛行)も披露してくれました。

 「秋の日はつるべ落とし」時計が午後4時をまわると日は西に傾き、円山川は川面の反射とススキの穂だけが光るモノトーンの世界へと移りかわります。翼を夕日に染めたミサゴを上流へ見送りこの日の観察を終えました。

 翌日もミサゴの姿を求めて円山川に向かいましたが、天候は昨日の好天と打って変わり雨です。水面には数羽のヒドリガモがしっとりと雨に濡れながら浮かんでいます。
 この日は、待てども待てどもミサゴは姿を現しませんでした。ついにしびれを切らせてしまいそうになったその時、灰色の空を音もなくグライダーのように滑空するミサゴが突然現れました。それにしてもこのスタイルは何度見てもほれぼれとします。ミサゴの翼がいかにスマートかは、同じワシタカ科で身近なトビと比べるとよくわかります。その後、色づいた山肌を背景に雨の中を旋回し灰色の空に吸い込まれていきました。

 この竹田地区の円山川に現れたミサゴは、河口から何かの気まぐれでやって来たのか。それとも北国からの越冬個体なのか。そんなことを思い巡らせていると、つかの間の日差しが円山川に七色のアーチを架けました。
 
文責 増田 克也

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