スギ(朝来山の夫婦スギ) 07.06.05





夫婦スギを訪ねて



 南但馬自然学校がある朝来山の西には、「夫婦スギ」と呼ばれるスギがあります。このスギは「但馬の巨木百選」に選ばれており、上の航空写真からも、3本の木がはっきり見て取れるほどの大木です。最近では、道が不明瞭な上に険しいため、訪れる人もないようですが、こんな素晴らしい財産を放っておく手はありません。そこで、夫婦スギを訪ねて朝来山に向かいました。

 夫婦スギへは、数年前に一度だけ山に詳しい地元の方に連れて行っていただいたことがありました。その方ですら、「この辺やったやろうか?」「この谷やと思うんやがなぁ・・・」と道らしいものがない斜面を、長年の勘を頼りに案内してもらったことを思い出します。そのときの道をたどっても、とても行き着ける自信はありません。そこで今回は、朝来山の西の尾根に回り込み、中腹を東に進み夫婦スギを見つけだす、ローラー作戦のような計画をたてました。

 朝来山に足を踏み入れ、まず迎えてくれたのは体長1メートル以上もある“アオダイショウ”です。日向で身体を暖めていたところを邪魔してしまいました。しばらく進むと、今度は山菜採りの地元のみなさんに出会いました。道を尋ねると「道はようわからんけど、といい(遠い)でぇ〜」とのことでした。確かにその言葉どおり険しい斜面を行けども行けども、夫婦スギらしいものはありません。
 途中、植林地の中に“サクラの古木”を見つけて一休みしました。岩を抱き込むように張った根っこの側には、蘭の仲間“エビネ”が涼しげな花を咲かせています。根っこの脇に腰を下ろし視線を上げると、近くには“フタリシズカ”が群生しています。フタリシズカとは別種ですが、花が1本のものを“ヒトリシズカ”といい、2本以上のものをフタリシズカと呼びます。探してみると“3人シズカ”や“4人シズカ”も見つけることができました。

 エビネやフタリシズカにもらった元気で2つの谷を渡り、北に延びる尾根にどうにかはい上がったところで、息も絶え絶え頭を上げると、大きなスギが目の前に姿を現しました。空を貫かんばかりの勢いで真っすぐに伸びた3本の大木、この堂々たる姿は数年前に訪れた“朝来山の夫婦スギ”に間違いありません。あまりの迫力にしばらくの間、ただただ見とれるばかりでした。
 ここには3本の大木が立っています。単純な疑問として「夫婦なのになぜ3本?」これは以前に訪れたときにも感じていました。今回、観光案内センターに出向き尋ねてみましたが、謎は闇の中から浮かび上がることはありませんでした。

 小さな谷を挟んで、西側には幹周り6メートル以上と言われる一番大きな木が陣取り、その根元には人の胴より太い、自身の枝が転がっています。枝の上には、今年の春に芽吹いたと思われる、小さな子孫が息づいていました。東側に並んでそびえるスギもかなりの大木です。その一本の根元には、ツキノワグマが冬眠できそうな大きな洞が空いています。恐る恐るの中をのぞき込むと、石が2つ積み重ねてありました。何かの信仰の対象であったのでしょう。

 ほんの少しの滞在で心残りもありましたが、何より夫婦スギとの再会を喜び、かたわらに咲く“エビネ”に見送られ帰路に着くことにしました。帰りには、そのまま谷を下り、より安全なルートを検索しながら、ポイントになる木に目印のテープを付け下山しました。自然学校で本校を訪れる子どもたちにも是非、朝来山の夫婦スギを訪ねてほしいものです。

文責 増田 克也

このページのご意見ご感想をメールでお寄せください
Email mtajimashizen@pref.hyogo.lg.jp