クマノミズキ 07.07.10





雨に煙る白い花



 只今、梅雨まっただ中の南但馬自然学校では、雨に煙る白い花が幻想的な世界を創り出しています。そこで南但馬自然学校の朝来山に、梅雨に咲く白い花を訪ねてみました。

 ちょうど今、ぎっしり付いた小さな花を満開にしているのは、“クマノミズキ”です。クマノミズキは朝来山では普通に見られる木で、珍しくはありませんが、この時季ばかりは花をいっぱい咲かせ存在をアピールしています。高さ10mを越える高木は、枝を花で覆い尽くしこちらに迫り来るような迫力があります。「ウォンウォン」羽音を響かせ群れ集う虫たちを従えたその姿は、正に王様の風格です。

 チャノキ(茶)に似た白い花を、葉っぱの裏側にひっそりと咲かせているのは“マタタビ”です。花は盛りを過ぎ、黒ずんだものや花びらが落ち“がく”だけになっているものが多く、僅かにふくらんだ雌しべは、秋に熟す干し柿型の果実を予感させます。マタタビは花だけではなく葉っぱも白い色をしているので遠くからでも大変よく目立ちます。
 この「マタタビ」という名前の由来は「疲れた旅人がマタタビの実を食べ元気になり“また旅”(マタタビ)ができるようになった」と記憶していましたが、どうやらこれは俗説のようです。しかし「旅人がまた旅(マタタビ)」とは夢がありますね。

 散策道しかコースでは、つる性植物“キジョラン”が咲いています。まん丸なつぼみが開くと、くさび形をした5枚の花びらが姿を現します。この花の蜜はよほど魅力があるのか、強い雨の中でも“ムネアカオオアリ”が身体をいっぱいに伸ばして蜜採りに奮闘しています。こちらのムネアカオオアリたちは葉っぱの上で、「キジョランの蜜は最高!」などと内緒話でもしているのでしょうか。
 この気高い雰囲気を持つキジョランを漢字で書くと「貴女蘭」かと思いきや、なんと「鬼女蘭」となります。これはただ事ではありません。早速、由来を調べてると、実から綿毛が飛び出した姿が、髪の毛を振り乱した鬼の姿に似ていることから付けられた名前だそうです。今年の晩秋には、是非、恐ろしげな鬼女の姿を見てみたいものです。

 その他にも、花の形がトラのシッポに似ているところから名付けられた“オカトラノオ”や、アジサイの仲間、“ノリウツギ”など、今の季節は白い花が一世を風靡しています。
 さあ、うっとうしい梅雨に負けず外へ飛び出してみましょう。雨に洗われた植物は、普段よりずっと美しい姿であなたを迎えてくれますよ。

文責 増田 克也

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