コサメビタキ 08.05.06





コサメビタキの巣作り



 南但馬自然学校にある生活棟の南側には雑木林が広がり、子どもたちが基地作りなどの活動によく利用しています。今ここで、コサメビタキという夏の渡り鳥が巣作りを始めました。今週の“自然のページ”はその様子をご紹介します。

 高さ約15メートル、コナラの横枝に大人のにぎりこぶし大の巣を見つけました。その巣は一度目を離すと、どこにあるのかわからなくなるほど、森の木々にとけ込んでいます

 親鳥が巣の材料を運んできました。これは岩などの表面に付く緑色のコケです。コサメビタキはこのコケを上手に使って巣を作ります。
 次に持ってきたのは木の幹などによく付いているウメノキゴケというコケで、巣の周りに使います。この薄っぺらなコケをクモの糸の接着剤(せっちゃくざい)で、タイルのように巣の周りに貼(は)り付けると、コサメビタキの巣は枝にできた木コブと見間違えるほど、巧(たく)みにカモフラージュされます。

 コサメビタキのペアは大忙しです。1分から3分間隔(かんかく)で材料をくわえては、一直線に飛んで戻ると巣の直前で大きく羽を広げて急ブレーキ! 手際(てぎわ)よく材料を積み上げると息つく間もなく飛び出していきます

 次の日も様子をうかがいにいきました。ところがどうしたことでしょう、昨日まであれだけせっせと通っていたペアが、15分経っても、30分経っても巣に戻ってきません。
 40分を過ぎた頃にようやく1羽が帰ってきました。双眼鏡で観ると・・・おや、くちばしには顔がかくれてしまいそうなほどたくさんの羽毛をくわえています。いよいよ巣作りも最終段階に入ったようで、卵を産み付けるための産座(さんざ)と呼ばれる、中央のくぼみに敷きつめる羽毛や動物の毛を運んでくるようになりました。
 なるほど、これでコサメビタキがなかなか巣に戻ってこない理由がわかりました。昨日まで運んでいたコケは、辺りにいくらでもあり、簡単に調達(ちょうたつ)できますが、産座の材料にするための羽毛や動物の毛を探すには時間がかかるためです。

 この日、ハプニングが起こりました。コサメビタキの巣に黄色と黒の模様をしたオスのキビタキがやってきました。両者はにらみ合ったままピクリとも動きません。このときはキビタキが一旦(いったん)、飛び去りましたが、ついには巣に体当たりをしてくるようになりました。このキビタキはいつもこの辺りでさえずり、縄張(なわば)りにしている主です。
 キビタキの攻撃(こうげき)に、巣作りをやめてしまわないかと心配しましたが、その後、巣の中にいるメスにオスが優しくエサを与える、仲睦(なかむつ)まじい姿を見せてくれて一安心しました。
 さあ、この先コサメビタキのペアは無事に子育てを終えることができるでしょうか。これからしばらくの間、観察を続けていこうと思います。

文責 増田 克也

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