霧 雨 07.11.06




霧雨の森へ



 盆地の隅々まで雲海が広がり、秋晴れとなった翌日は朝から霧雨でした。そこで南但馬自然学校の“散策道たぬきコース”から南に道を外れ、森の中に分け入ってみました。それでは霧雨の森で出会ったものたちを紹介しますのでご覧ください。

 森の入口に立つ、白い貝殻のようなキノコをびっしりと付けた枯れ木を尻目に進むと、この周辺に多いガレ場に行き当たり、そこには湿潤な天候を待っていたかのように、厚みが5pほどもある青黒いコケがしっとりと霧雨に濡れていました。
 先に進むと白く煙る、大きな倒木が浮かび上がりました。近くの木にもたれ掛かり大きく傾いでいます。倒木の下に入り込み上を見上げると、子どもの手のひらほどの立派なキノコが傘を開いていました。薄暗い森を背景に浮かび上がった黄色いキノコは実に幻想的です。上ばかりに気を取られていると足元の2pにも満たない小さな赤いキノコを危なく踏んづけそうになりました。こちらのキノコはおとぎ話に出てきそうなほど愛らしい色と形をしています。
 帰り道では、空から星が降って来たのかと思わせるような星形キノコが丸太の階段にかくれているのを見つけました。どうやら、霧雨の森はキノコたち菌類が支配しているようです。
 
 地面にうごめくオレンジ色に目をやると、軽快に横歩きをするサワガニでした。今日の霧雨はサワガニにさぞ快適な環境をもたらせたのだろうと思いきや、不機嫌そうに何やらブツブツ文句を言っているように見えます。顔を近づけてのぞき込むと、巻貝を両方のハサミでしっかりと掴み、口に押し当てていました。不機嫌に思えたのは食事をしていたからですね。
 サワガニを後にして、たぬきコースの階段を登りきると、倒木から芽を出した双葉がみずみずしい葉を光らせていました

 誰かに手招きをされたかのように足を踏み入れた霧雨の森は、普段見慣れた風景を神秘的に変化させていました。一雨ごとに深まりを増すこの季節に、次はどんなものを見せてくれるのでしょう。霧雨が待ち遠しく思えるこの頃です。

文責 増田 克也

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