ケリ 08.05.13




休耕田にヒナ誕生



 南但馬自然学校に続く県道脇の休耕田に、ケリというチドリの仲間が巣を作りました。約1ヶ月間、卵を温めていましたがいよいよヒナが誕生したようなので、親鳥の留守(るす)を見計らってそっとのぞきにいってみました。

 「あの辺りだろうな?」遠目には全くわからない巣の位置を、予め予測して休耕田に入りましたが、なかなか見つけだすことはできませんでした。それもそのはず、ケリの巣は草や藁(わら)を地面に集めただけの簡単なものでした。巣の中には枯れ草模様のヒナが2羽と卵が1個、地面にすっかりとけ込んでいます。目を凝(こ)らして辺りを見回すと、巣から少し離れた場所にも地面のくぼみにうずくまるように1羽のヒナが身を隠していました。驚いたことに、手が届きそうなほど近づいてもピクリとも動きません。自分の身を守る方法は、「危険が去るまでじっと動かない」ということを生まれながらにして知っているようです。

 他にも地面に隠れているヒナがいるかも知れません。慎重(しんちょう)に足下を見ながら一歩一歩進み、ようやく休耕田から出たところで、突然、空からけたたましい声が響(ひび)いてきます。「しまった!」親鳥が帰ってきました。一目散(いちもくさん)に引き上げ、離れた車の中から観察をすることにしました。

 親鳥が降り立つと、ヒナたちはリラックスしてちょこまかと動き始め、生まれて間がないというのに、地面を盛んについばんでは、もうエサを採っています
 多くの野鳥は、生まれたときには目も開かず羽毛もありません。また、巣立つまでは10日以上もかかり、その間は親鳥からエサを与えてもらいます。ところが、ケリのヒナは生まれつき羽毛があり、数時間で動きだしてエサを採れるようになります。これは、危険が多い地面に巣を作るケリやキジの仲間にみられる特徴で、巧(たく)みな自然の仕組みに感心させられます。

 ところで先ほどから、3羽いるはずのヒナの1羽がみあたりません。でも、心配はいりませんでした。しばらく経って親鳥のお腹の下からぴょこっと顔を出しました。もうすぐ、巣の中に残っていた卵も孵(かえ)ることでしょう。愛らしい姿を見せてくれるケリの親子からしばらく目が離せません。

文責 増田 克也

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