ホタルブクロ 07.06.26





梅雨の晴れ間に



 キキョウ科の多年草、ホタルブクロが咲くと南但馬自然学校にも梅雨が訪れます。日本情緒あふれる白い釣り鐘形の花は昔から人々に好まれ、各地でツリガネソウ、トックリバナなど様々な地方名で呼ばれています。標準和名の「ホタルブクロ」という名前の由来について調べると、花の形が提灯に似ているとか、花の中にホタルを入れて遊んだなど諸説あるようです。
 本校のホタルブクロは毎年、校門付近で花を咲かせます。白い花を右へ左へと風に揺らせ、誰よりも先に訪れた子どもたちを歓迎しているかのようです。

 今日は何日かぶりに空が明るくなりました。それではこの梅雨の晴れ間に今の南但馬自然学校の様子をご覧ください。

 生活棟からキャンプ場に続く道には、1pにも満たない花を付けた“ツルアリドオシ”がひっそりと咲いています。あまりにも小さな花なので気に留める人もありませんが、どれも対の花をしっかり空に向けて咲いています。辺りを探すと、本校では珍しいピンク色の花も見つけることができました。秋になると、チューブから押し出したような突起がある赤い実を付けます。この実も小さく目立ちませんが、冬になりひとたび雪が積もれば誰もが赤い実の存在を知るところとなります。 

 散策道くまコースではトンボが羽化するところに出くわしました。コンクリートでできた1m四方の小さな“升だめ”からヤゴがはい上がったようです。私が見つけたときには既に羽は伸びきっており、あっと言う間に大空に飛び出していきました。後で写真を頼りに名前を調べると大型のヤンマの仲間、“ヤブヤンマ”ではないかと思われます。
 
 朝来山のふもとにある池では、今年もモリアオガエルが産卵し、池に張り出した枝に、白いメレンゲ状の泡をいくつも付けています。産卵のピークは幾分過ぎましたが、7月上旬まで産卵は続きます。
 カエルがいるところには必ずヘビも集まります。視線を足元に落とすと黒光りしたヘビが身体をくねらせていました。シマヘビの黒化型(通称カラスヘビ)かと思いましたが、下あごから喉にかけて黄色キール(うろこの盛り上がり)が目立つことからヤマカガシの黒化型に間違いありません。ヤマカガシは色や模様に様々なバリエーションがあり出会うたびに楽しくなります。

 生活棟まつの館では、“ニホンジカ”に出会いました。このニホンジカとの距離は約10mほどで、時折、物音に耳だけを動かし、私を大して恐がりもせず余裕の表情で草をはんでいます。このニホンジカは「本物のシカが見られた!」と子どもたちに大人気ですが、人を恐れない「次世代ニホンジカ」の登場は困りものです。
 ニホンジカの様子を見ていると、聞き慣れない声がひっきりなしに聞こえてきます。声がする方へ近より目を凝らすと、斜面に野鳥のヒナを見つけました。羽の色や模様から巣立ちしたばかりの“ホオジロ”のヒナでしょう。ずいぶん体力を消耗しているのか、やがて目を閉じてしまいましたが、親鳥を呼び続ける鳴き声はいつまでも途絶えることはありませんでした。

文責 増田 克也

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