ヒヨドリ 07.01.30





柿の木レストラン



 去年の秋はたくさんの柿が実りました。柿の実は野鳥たちの大好物です。ところが野鳥たちが全く手を付けず、いつまでもたわわに実を付け、枝を重たそうにうなだれている木があります。そんな柿の実を、ひとくちかじってみてください。きっと、口いっぱいに渋〜い味が広がることでしょう。渋柿も何度か雪や霜に当たり、年が変わる頃には、柔らかく熟していい塩梅(あんばい)に渋みも抜けます。
 「待ってました!!」野鳥たちは熟柿(じゅくし)になる時季をよく知っていて、つぎつぎに柿の木にやって来ます。食べ物が少ない冬には貴重な食料です。私は、冬に野鳥たちがやってくる柿の木を“柿の木レストラン”と呼んでいます。それでは、柿の木レストランを訪れる野鳥を3種類ご紹介することにします。

 まず最初は、遠く北の国から日本へ渡ってきた“ツグミ”です。「バタバタ」と羽音が聞こえたかと思うと、もう枝にとまっていました。茶色い背中、胸とお腹は黒のぶち模様、首に下げた修行僧のようなネックレスがよく似合っています。
 ツグミは、すぐに食べようとはせず、木の枝から辺りを見回して「ど・れ・に・し・よ・う・か・な」柿の実を物色中です。結局、他の鳥が食べ残した実に、顔が隠れてしまうほどくちばしを突っ込んで満足そうに食べ始めました。どうやら中身が露出した柿の実の方が食べやすいようです。

 おや、茂みの中からごそごそと地味な色をした鳥が出てきましたよ。この野鳥も冬の渡り鳥、“シロハラ”です。普段は林の地面を、足やくちばしで探っては、落ち葉の下に隠れる虫などを捕って食べているので、なかなか姿を見せてくれません。でも、甘〜い柿の魅力にはかなわないらしく、枝に上がるやいなや大口を開けてかぶりついていました。

 「ピーヨピーヨ」けたたましい声と共にやって来たのは“ヒヨドリ”です。ヒヨドリは柿の木レストランの常連さんですが、数羽でやって来ては他の野鳥たちを蹴散らすように、柿の木を占領してしまうのは困りものです。
 ヒヨドリは他の野鳥と違って食べ方に特徴があります。ツグミやシロハラはくちばしでついばんだ実をそのまま食べますが、ヒヨドリは一旦、空中に放り投げ、直接、喉の奥に運んで食べます。おっと!少し柿の実が大きすぎて、喉に詰まりそうです

 この他にも柿の木には、カラスやメジロ、シジュウカラといった様々な野鳥が訪れます。また、集まる小鳥を狙って猛禽類が姿を見せることもあり、野鳥観察には打ってつけです。みなさんも“柿の木レストラン”に足を運んでください。辛抱強く待っていると楽しい出会いがありますよ。

文責 増田 克也

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