ヒバカリ 07.07.17





その日ばかりの命



 現在、南但馬自然学校では7種類のヘビの生息を確認しています。その中で、出会う機会が少なく他のものとは一風違った“ヒバカリ”というヘビをご紹介しましょう。
 ヒバカリは兵庫県レッドデータブックで「要注目種(最近減少の著しい種、優れた自然環境の指標となる種などの貴重種に準ずる種)」に指定されています。本校でも1シーズンに1、2回程度しか見られない大変珍しいヘビです。
 体長は大きな成蛇で60pほどになるそうですが、これまで出会ったものはミミズ程度の幼蛇がほとんどでした。しかし、上の写真の個体は40pを越える立派なヒバカリでした。
 身体の色は暗い褐色で、模様にもこれといった特徴はありませんが、えりもとの黄色味がかったラインが他のヘビとの識別ポイントになります。

 この「ヒバカリ」というなんともヘビらしくない名前の由来は、大変愉快なものです。その昔、ヒバカリは毒蛇だと考えられていました。それはそれは、とんでもない猛毒で、ヒバカリに咬まれると「その“日ばかり(ヒバカリ)”の命」だと信じられていたところから付いたようです。全く落語のような話ですね。
 実際には、無毒で性質も大変おとなしく、手にとっても咬みつくようなことはまずありませんので、携帯電話で記念撮影なんて芸当も簡単にできてしまいます。「こんなに人懐っこいのならペットにしたい」と思われる方もあることでしょう。しかし、ヒバカリは繊細な神経の持ち主で飼育するのは大変難しいヘビです。私も過去にヒバカリの飼育に挑戦しましたが、結局、餌付かせることができず断念した記憶があります。やっぱり野生種は自然の中で過ごすのが一番ですね。

 一通り記録写真を撮ってから、キャンプ場を流れる佃川に放してやりました。オタマジャクシや小魚を好んで食べるヒバカリには水辺の景色がよく似合います。川辺にしばらく佇むと、スマートな身体を滑らせ川上に姿を消して行きました。
 今度、また出会えたならば、しばらく変な人間のお相手を願いたいものです。

文責 増田 克也

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