エゾビタキ  06.10.10


ドングリまなこの渡り鳥



 秋の朝来山に立ち入ると、ひっそりと静まりかえりどこか寂しささえ感じます。春には にぎやかだった野鳥の声も全く聞こえません。秋風に乗り、時折聞こえる虫の音もわびしく感じます。
 でも、寂しがることはありません。秋になると越冬のため北の国から渡り鳥がやってきます。先日、南但馬自然学校に今季最初の渡り鳥がやって来ました。そこで今週の「自然のページ」は一番乗りの渡り鳥、エゾビタキのお話をします。

 上の写真を見てください。木にとまっているのがエゾビタキです。大きさはスズメくらいで、胸にある縦縞模様が特徴です。「地味でなんだかパッとしない小鳥だなぁ」なんて思われるかもしれませんね。でも、顔をじぃ〜っと見ていると、なぜが親しみが湧いてきます。その秘密はチャームポイントの目にあります。エゾビタキは、体に対して目が大変大きい小鳥です。「そんなに大きいかな?」と思われる方は、スズメと比較したこの写真を見てもらえば一目瞭然です。

 エゾビタキは長距離を移動する渡り鳥です。春に越冬地の南の国を旅だち、日本よりもっと北のサハリンやカムチャッカで子育てをします。秋になると北の国を出発して日本を通過し、南のフィリピン辺りで越冬します。つまり、日本では1年で春と秋の2度、エゾビタキに会えることになりますね。
 写真のエゾビタキは、北の国から南の国へ向かう途中に、南但馬自然学校に立ち寄って、ちょっと休憩しているのです。このように日本を通り過ぎていく渡り鳥を“旅鳥(たびどり)”といいます。

 朝来山の散策道くまコースでは、エゾビタキたちがアカメガシワの実を食べにきています。初夏の花盛りには昆虫たちに人気だったアカメガシワは秋に黒い実をつけ、今では野鳥のレストランになっています。ほら、“エゾビタキ”さんのご来店です。こちらには朝来山でこの春生まれた“オオルリのオス”がきましたよ。辺りの様子をうかがいながら、おいしそうに実をついばみ始めました。来年の春には全身ルリ色の美しい姿で朝来山に帰ってくることでしょう。しばらくして“オオルリのメス”もやってきました。木の中ほどには目に白い縁取りをした“メジロ”の姿も見えます。当分の間、アカメガシワは野鳥たちで大盛況です。

 アカメガシワの実がなくなると、エゾビタキたちは南但馬自然学校を後にして南へ旅立つことでしょう。朝来山の幸で十分体力を養い、南の越冬地への長い旅を乗り切り、来年の春には再び元気な姿を見せてほしいものです。

文責 増田 克也


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