空飛ぶマシュマロ
南但馬自然学校の散策道を歩いていると、エナガという野鳥の群れに出会うことがあります。身体の大きさはスズメよりずっと小さく、体長約14センチ、体重は約7グラムほどですから、枝から枝へ素早く飛び移ると、垂直にとまったり、ぶら下がったり、軽業はお手のものです。
正面から見るエナガは、まるでふわふわのマシュマロのようです。ところがひとたび横を向くと、身体と不釣り合いなほど長い尾羽が現れます。この独特なスタイルが、柄杓(ひしゃく)の長い柄に似ていることからエナガと名付けられたそうです。
名前の由来にもなった、体長の半分ほどもある立派な尾羽ですが、「これがもう少し短ければ、日本で最小の野鳥、キクイタダキと肩を並べることになるのになぁ・・・もったいない」などと思うのは人間の身勝手な考えですね。
長い尾羽と対照的なのがくちばしです。余りにも小さいくちばしは、見る角度やポーズによって、どこがくちばしでどこが目なのか、一瞬わからなくなることさえあります。この慎ましいくちばしでいったい何を食べていると思われますか。花の蜜でしょうか、それとも小さな草の種でしょうか?
それでは、エナガの食事シーンを見てください。クリの小枝に飛び移ったエナガが、突然、上の枝をつつきました。何かをみつけたようですね。写真を拡大してみると、くちばしにアブラムシをくわえています。アブラムシも食べられまいと必死に足を枝に絡めている様子がうかがえます。エナガたちは小さなくちばしで、意外にも虫やクモなどを捕らえて食べていました。木にとって迷惑な害虫退治にも一役買っているようですね。
彼らがやってくると、冬枯れの林はいっぺんに華やかになります。よく見ると群れの中には、他の小鳥も仲良くいっしょに行動していることがあります。「ジュリッ、ジュリッ」賑やかな声が聞こえてきたらエナガの群れを探してみてください。枝先でふわふわのマシュマロが跳ねている様子は、見ているだけできっと幸せな気分にさせてくれますよ。
文責 増田 克也
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