チカラシバ  06.10.17


秋の色「青・黄・赤」



 秋の朝はモノトーンから始まります。どっぷりと濃い霧が白さを増し始めると、フィルターをかけたような太陽が顔を出します。すると朝霧の衣装をまとった“チカラシバ”が銀色の穂を一斉に輝かせ、陽が高く上がるまで、つかの間のファッションショーを演じます。チカラシバが普段着に着替える頃には、頭の上に高い秋の空が広がっています。

 南但馬自然学校の秋は、少しずつひっそりと深まりを増しています。本館棟のケヤキはもう黄色く色づいていますが、生活棟に続く中央石段のメタセコイヤは、黄緑色に変わり始めたところで、秋本番はもう少し先のようです。では朝来山はどうでしょうか。そこで信号機と同じ色の青・黄・赤を「秋の色」として、花や実を探しに朝来山に出かけてみました。

 くまコースの入口で、“コウヤボウキ”を見つけました。細い枝先に薄いピンク色の小さな花を付けています。この名前は、高野山でほうきの材料に用いられたことから付いたそうです。コウヤボウキのすぐ下には、“アキノキリンソウ”が黄色い鮮やかな花をいくつも付けていました。毎年見られる花で、珍しいものではありませんが、名前がいかにも秋らしく私のお気に入りです。もう少し登ると、赤と青の実が目に付きました。これはクスノキの仲間、“シロダモ”ですね。名前は葉っぱの裏が白いことに由来しています。こちらのシロダモは黄色い花を咲かせていますが・・・あれ、この木には実が付いていません!? その訳は、シロダモにはオスとメスの木があり、実のないこの木は“オス”なんですね。足下に黄色いイソギンチャクのような奇妙なものを見つけました。いったいこれは何でしょう? 調べてみると、これでもれっきとしたキノコで、名前を“ナギナタタケ”といいます。図鑑では「酢の物や和え物として食べられる」とありますが、あまり食欲が湧かない色と形です。
 むささびコースの高い位置には、小さな赤い実を付けた“サンショウ”の木がありました。うなぎの蒲焼きなどにふりかけるといい香りがする粉山椒は、この植物の実から作られています。
 しかコースでついに見つけた青い花!“リンドウ”です。秋にこの花に出会えないと、何か忘れ物をしたかように感じます。肩を寄せ合い3つ仲良く咲いていました。

 今秋の朝来山は少し寂しく感じます。いつもならこの時季、ムラサキシキブやノブドウが青色を、そしてガマズミが赤色で山を演出しますが、今年はいずれもあまり見かけません。みなさんのところはどうでしょう? 機会があれば、自分なりの「秋の色」を探して、近くの山へ出かけてみてください。
 
文責 増田 克也

 
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