アオゲラ  06.07.04

3本足の野鳥


 南但馬自然学校では「自然ふれあい調査」と題して、子どもたちがタマネギやフナ、ニワトリなどをどれくらい正確に描けるか、絵を描いてもらったことがあります。これは絵の上手下手ではなく、日頃、子どもたちが、どの程度自然と関わりを持っているか、絵を描いてもらうことによって調査するものでした。
 その中で私が興味を持ったのはニワトリの絵です。ある程度は想像していましたが、私の予想を遥かに超えたユニークなニワトリたちが描かれていました。

 まるでイヌやネコのように、全身毛むくじゃらのもの、頭のとさかがロングヘアーのように背中まで伸びたもの、そしてこれらに共通して見られるのは「4本足」です。この他にも4本足のニワトリを描いたものはいくつもありました。これは、子どもの頃からニワトリに囲まれて育った私には、衝撃的で信じがたいことです。
 近年、ニワトリを飼う家庭は少ないでしょう。しかし、多くの小学校ではチャボやクジャク、インコなどを飼育しているはずです。現代の子どもたちは観察力が低下しているのでしょうか? 思いは巡るばかりです。
 
 さて、今回のお話は「3本足の野鳥」ですが、上の写真のアオゲラがその3本足の野鳥です。見てのとおりキツツキの仲間です。南但馬自然学校では4種類のキツツキが暮らしていますが、その中で身体が一番大きく、くちばしもサクラの生木に穴を開けてしまうほど強力です。
 アオゲラは他の野鳥と違い、木の幹を上手に移動したり、垂直に上ることもできます。アオゲラを撮影しようとカメラを向けると“クルッ”と幹の裏側に隠れてしまい、カメラを下ろすと“ササッ”と表 に姿を現します。この素早い身のこなしは、他の野鳥ではとても真似できません。
 この俊敏な身のこなしには、足に秘密があります。アオゲラは、垂直な木の幹をしっかり掴むことができる、大きく頑丈な2本の前足を持っています。しかし、前足の2点だけで身体を支えるのでは不安定です。そこで活躍するのが“3本目の後足”です。前足2本と後足1本、この3点でしっかり身体が安定するという訳です。

 みなさんはもう気づいていますね? 実は、アオゲラの3本目の足は尾羽なんです。巣穴の中をのぞき込むときも尾羽をうまく使っています。尾羽の軸は、他の野鳥よりずっとしっかりできていますが、先が曲がるほど幹に突き立て、足のように器用に使っています。アオゲラはやっぱり“3本足の野鳥”ですね。

文責 増田 克也



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