無償貸与のマイホーム


事務所の近くにある、ケヤキにやって来たシジュウカラ くちばしには・・・
 
「うちの事務所によく来る白と黒の鳥はなんだろう?」と相談を受けたので、早速、現場を訪ねました。

待つこと数分、「ツツピー、ツツピー」どこからか甲高(かんだか)い鳴き声が聞こえたかと思うと、姿を現したのは、白いほっぺたと黒いネクタイ模様が特徴(とくちょう)のシジュウカラでした。

シジュウカラは、スズメより少し小さい程度の小鳥で、市街地の公園から標高1,000メートルを超(こ)える自然豊かな山中まで幅(はば)広く分布しており、四季を通して見られる、私たちに大変身近な野鳥です。


プレハブ事務所の壁には、何やら丸い穴が・・・
 
このシジュウカラが、プレハブ事務所に度々姿を見せるのには、それなりの理由があります。事務所の写真をよくご覧ください。壁面(へきめん)の屋根近くに直径5センチほどの穴が開いていますね。これはエアコンの配管を通すための穴ですが、シジュウカラは、どうやらここで子育てをしているようです。

森林で生活するシジュウカラは、キツツキなどが開けた木の穴に巣をかけますが、そこは巣箱をよく利用するシジュウカラのことですから、プレハブ事務所の穴もおあつらえ向きのマイホームなのでしょう。




 外壁と内壁の空間を利用して営巣する

エサを運ぶ親鳥を観察すると、3~5分間隔(かんかく)で、せっせと虫などを持ち帰ります。それではここで、ヒナが巣立つまでに、エサとなる虫がいくら必要なのか計算してみましょう。

☆ 親鳥は5分で1匹の虫を運んでくるとするならば、1時間では12匹となります。

1日うち、虫を捕らえることができる時間を、午前4時から午後7時までの15時間と仮定する  と、1日では180匹となりますね。

☆ 孵化(ふか)して巣立つまでに、約20日間かかりますので、180(匹)×20(日)=3600(匹)

親鳥は一回の給餌(きゅうじ)で、複数の虫を持ち帰ることがありますし、それとは逆に、天候不順などで虫が捕(と)れないこともありますので、この計算はあくまでもシュミレーションですが、とにかくエサとなる虫が大量に必要なことを感じていただけたと思います。

さて、このヒナたちは無事に巣立つことができるでしょうか。幸いなことに、プレハブ事務所のオーナーは、シジュウカラに子育て用のマイホームを、無償貸与(むしょうたいよ)してくださるようなので、しばらくの間、成り行きを観察してみたいと思います。
 文責 増田 克也
 


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