沢(さわ)に沿って延びる林道を通行していたときのことです。落ち葉と同じような色をした、団子ほどのものが地面を飛び跳(は)ねていました。その団子を目で追い、動きが止まったところを双眼鏡(そうがんきょう)で覗(のぞ)いてみると、それは巣立ちをしたばかりのミソサザイでした。
ミソサザイは、日本で最も小さい野鳥の一つです。体長は10センチ程度、体重は10円玉1枚と1円玉数枚の、わずか10グラムほどで、キクイタダキやヒガラと並ぶ、超(ちょう)軽量級の野鳥です。
しかし、その小さな体からは想像できないほど、パワフルで複雑な節回しのさえずりは、渓流(けいりゅう)を下る水の轟音(ごうおん)をものともせず、ストレートに耳まで届きます。
春から夏にかけての繁殖(はんしょく)を、沢沿いの山地で行うミソサザイは、子育てを終えた秋以降になると、沢から離(はな)れた本校の林でも姿を見ることができます。
その頃(ころ)には、高らかに歌う繁殖期のさえずりはどこへやら、「チャッチャッチャッ」と舌打ちに似た小さく地味な声に変わり、藪(やぶ)やコケの中を素早く移動しては、クモや虫を捕(と)らえる忍者(にんじゃ)のような姿で春まで過ごします。
今回出会ったのは、巣立ちして間もないミソサザイとその親鳥です。団子が転がるように、せわしなく跳ね回る様子や、エサを運ぶ親鳥をビデオに撮(と)りましたので、上のフレームからご覧ください。
文責 増田 克也
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