年頭にタカ

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。


 「どうですか? クマタカは飛びましたか?」本校の近くで、与布土(ようど)地区に生息するクマタカを定点観察する、調査会社の方に声をかけました。「今日はまったく・・・一度ハイタカが飛んだだけですよ」などと、道路を隔(へだ)て、たわいもない会話をしていたときのこと、裏山からサッと一直線に、田んぼの畦(あぜ)に降りて来たものがありました。

 早速、双眼鏡(そうがんきょう)を目にやると、おや、たった今、話題に上がったばかりのハイタカではありませんか。半身を草にうずめて、こちらを振(ふ)り返りました。おそらく獲物(えもの)を見つけて畦に降りてきたのでしょう。
 これは幸運です。空を飛ぶ姿なら未だしも、地上でハイタカを見られる機会など、そうそうあるものではありません。しかし、ここからは距離(きょり)あるため、はっきりと観察できません。そこで少しずつ接近することにしました。

 さあ、今回の狩(か)りはいかがでしょう。成功していれば、獲物を足で押(お)さえつけているはずですが・・・残念なことに、そんな素振(そぶ)りはなく、どうやら空振(からぶ)りに終わったようです。
 ハイタカは、名前が示すとおりタカの仲間で、本校の周辺では、冬の時季に見られる猛禽類(もうきんるい)です。主に小鳥を捕食(ほしょく)しますが、時にはネズミなどの小動物を捕(と)らえることもあります。

 ところで、みなさんは、タカにどのようなイメージを持っていますでしょうか。他の生き物を捕らえて食べる猛禽類ですから、強くて大きい印象はありませんか。スポーツチームが、マスコットキャラクターやチーム名などに、タカを多用しているところをみても、それが一般的(いっぱんてき)なイメージなのでしょう。
 しかしながら、ハイタカのサイズは、タカの中でも小型の部類に入ります。しかも、タカの類はメスよりオスの方が一回り小さいのです。今回出会ったのは、オスの成鳥ですから、大きさはせいぜいハトほどで、随分(ずいぶん)、こぢんまりとした体格です。とは言ったものの、どうですか、こちらに向けて放つ、この鋭(するど)い眼光は・・・体は小さくとも、やはりただ者ではありません。

 せっかくですから、ハイタカをじっくりと見てみましょう。それではもう一度、目の位置に注目して写真を見てください。人間のように正面にありますね。これは狩りをする動物の特徴(とくちょう)で、物を立体的に見ることができ、獲物までの距離を掴(つ)みやすい配置になっています。一方、捕食される側の動物は、目が顔の側面に位置する

                  顔の側面に目があるカルガモ

ことで視野が広くなり、広範囲(こいうはんい)に注意を払(はら)うには、大変有利な作りになっています。

 では次に背中を見てください。鱗状(うろこじょう)に整列した一枚一枚の羽根が、奥深(おくぶか)い、いぶし銀のような輝(かがや)きを放ち、美しいの一言です。趣(おもむき)がある青灰色(せいかいしょく)に目を奪(うば)われていると、ゆっくり体を入れ替(か)えて左側面を見せてくれました。こうして見ると意外に尾羽(おばね)が長いことに気づかされます。
 今度は、大きく足踏(あしぶ)みをして正面に向き直りました。背面から側面、そして正面までくるりとターンして披露(ひろう)してくれるとは、サービス満点です。正面から見た立ち姿が、これまたいいですね。勇ましげに胸を張り、成熟したオスの象徴(しょうちょう)であるオレンジ色の横縞(よこじま)模様を見せつけると、ハイタカは程なく東の空へ飛び去って行きました。

 束の間の出来事でしたが、希少なハイタカとの出会いは幸運でした。そして、2014年の初頭にあたり、縁起(えんぎ)がよいとされるタカを紹介(しょうかい)できたことは喜ばしい限りです。皆様(みなさま)にとって、どうか本年が幸多き年となりますようお祈(いの)り申し上げます。

文責 増田 克也

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