銀の脚をしたダイバー


 みなさん、カワガラスという野鳥を知っていますか。上の写真がそのカワガラスなのですが、なんだかパッとしない鳥ですね。この名前は、水辺に棲(す)み、カラスのような色をしているところから、名付けられたのですが、実際はカラスの仲間ではありません。大きさもカラスよりずっと小さく、スズメとハトの中間程度のこぢんまりとした野鳥です。

 カワガラスは、本校から東へ3qほど下った、与布土川(ようどがわ)の上流域でよく目にし、川岸に2時間も立っていれば、必ずと言っていいほど、水面を低空で飛ぶ姿を見られる、とても身近な野鳥なのですが、知名度は今ひとつです。
 それも仕方がないですね、鳴き声は「ビッ、ビッ」と耳障(みみざわ)りなダミ声で、お世辞にも美しいとは言えませんし、そもそもこの地味な黒っぽい姿では全く目立たないので、人々の記憶(きおく)に残らないのでしょう。
 そのような、見た目に冴(さ)えないカワガラスでも、他の鳥にはまねのできない特技を持っています。では、その特技を写真を交えて紹介(しょうかい)しましょう。

 1羽のカワガラスが、石の上へやって来ました。ピンと上に向いた尾羽(おばね)に銀色の脚(あし)、なかなかどうして、じっくり見るとかっこいいフォルムじゃないですか。さあ、これから何を始めるのでしょう。カワガラスはすぐさま水面に近づくと、いきなり頭をズボッ!するとそのまま水中へ、ジャブジャブ・・・

 そうなんです。カワガラスは、よほど水鳥らしくないこの姿で、ザブザブと水に入って、泳ぐ、潜(もぐ)るはもちろん、極めつけに川底を歩くというスゴ技を持っているのです。水深がある深みでは背中まで水没(すいぼつ)してしまいますが、そんなことはおかまいなしで、カワゲラの幼虫など、水生昆虫(すいせいこんちゅう)をせっせと探します。

 そんなカワガラスですが、少し気がかりなことがあります。以前は、上流域に暮らす、言わば「渓流(けいりゅう)の鳥」でしたが、近年、どういったことか、中流や下流、さらには与布土川の本流である、川幅(かわはば)が50m以上の円山川で姿を見かけるようになりました。
 ただ単に生息域を広げているだけなのでしょうか、それとも本来の住処(すみか)である上流域に、何か環境(かんきょう)の変化でも起きているのでしょうか、思いは巡(めぐ)ります。

 銀色の脚を持つダイバー、カワガラス。私の思いなどよそに、師走の寒さを物ともせず、今日もザブザブと川虫探しに精を出していることでしょう。


文責 増田 克也


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