花はメリーゴーランド


 キャンプ場を流れる佃川(つくだがわ)に、ヤマジノホトトギスが花を咲(さ)かせました。水際の法面(のりめん)にひっそりと咲いているので、ほとんどの人は気付かず通り過ぎていきます。本校でヤマジノホトトギスを見るのは、今回で2度目です。最初は6年前の9月に、やはりキャンプ場で花を咲かせ、この時は、自然学校の入校式で子どもたちに紹介(しょかい)したことを、再会した花を見て思い出しました。

 ここには、4つの花と2つのつぼみがありましたが、その内、1つの花は既(すで)にしぼんでいます。つぼみはロケット型で、明日にでも開きそうな、花と同じ色合いに変化したものと、まだ固い緑のつぼみが、じっくりとエネルギーを蓄(たくわ)えるかのように、葉の付け根に控(ひか)えていました。

 2階建ての花は、いつ見てもメルヘンチックな作りをしています。側で音楽でも流せば、ゆっくりと回転を始め、そのうち木馬でも出てきそうな、まるでメリーゴーランドを思わせる雰囲気(ふんいき)が、おとぎの国へ誘(いざな)います。

 花の2階部分は、雄(お)しべと雌(め)しべがあり、これを真上から見てみると、雄しべが6つ、そして雌しべが3つ重なるように付いています。特徴的(とくちょうてき)なのは雌しべです。雌しべは花びらと同じ模様で、表面には水滴(すいてき)のような粒(つぶ)がたくさん付いています。そして、先端(せんたん)はYの字に分かれて、これがいくらか時間が経つと、雄しべを抱(だ)き込(こ)むように、しな垂れてきます

 色といい、模様といい、形といい、ヤマジノホトトギスの花は、実に愉快(ゆかい)です。そのお陰(かげ)で、花を撮影(さつえい)している最中や、こうやって原稿(げんこう)を書いているときにも、頭の中を陽気なワルツが巡(めぐ)って離(はな)れません。インターネットで音楽を探してみると、イメージにぴったりのものがありました。

 では、下に貼(は)り付けたヤマジノホトトギスの画像にある、再生ボタンをクリックして音楽をお聴(き)きください。この曲にタイトルを付けるなら、もちろん“花はメリーゴーランド”ですね。

文責 増田 克也




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