花は長期熟成で


 今年の夏は連日の猛暑(もうしょ)で、外出してもつい日陰(ひかげ)へ足が向き、気がつけば涼(すず)んでいます。その点、ここは絶好の場所です。木々が屋根のように周囲を覆(おお)い、太陽が高くなってもたっぷりと日陰があり、昨日の夕立が与(あた)えてくれたお湿(しめ)りで、地面は未だに潤(うるお)っています。

 やれやれ、腰(こし)を下ろして一息つき、顔を上げると・・・おや、ウバユリ。丈(たけ)が1メートルはあるでしょうか、一株のウバユリが、圧倒的(あっとうてき)な存在感を放ちながら、すっくと立っていました。
 これは珍(めずら)しいことです。ウバユリは但馬の山地、鉢伏山(はちぶせやま)や氷ノ山の林道脇(りんどうわき)など、幾分(いくぶん)、標高の高い場所には、数多く自生していますが、今回のように、本校の周辺で目にしたのは初めてです。

 せっかく、見つけたウバユリですから、じっくり観察することにしました。まずは、上の写真をご覧ください。これは茎(くき)の先端(せんたん)にあるつぼみで、サイズは握(にぎ)り拳(こぶし)ほどです。これだけ大きいと、ハスのような花が咲(さ)くのではないかと思いますが、この塊(かたまり)がそのまま花になる訳ではなく、時が経つにつれ解(ほぐ)れるように展開して、数本のつぼみが現れます。ですから、これはつぼみというより、“つぼみの集合体”と表現した方が正確ですね。茎からひとつひとつ個別につぼみを出す、一般的(いっぱんてき)なオニユリなどとは随分(ずいぶん)違(ちが)います。

 次に葉っぱに注目してください。まっすぐ垂直に伸(の)びた茎の地面近くに、11枚の大きく立派な葉っぱがあります。しかし、葉っぱだけ見ると、これがユリのものとは到底(とうてい)思えません。ここで再び、オニユリを見てみましょう。細い葉っぱが下から上までビッシリと付いています。やはり、これがユリの葉っぱのイメージですね。

 何とも変わり種のウバユリですから、開花が楽しみです。見つけた次の日から、毎日のようにウバユリの元へ通いましたが、1週間経っても、花を咲かすどころか、つぼみの集合体は固く閉ざされたままで、見た目には何の変わりもありません。
 ようやく、変化が見られたのは、2週間後のこと、集合体が解れて個々のつぼみが現れました。数えると7本のつぼみを付けています。

 時間を費やし、少しずつ熟成するかのように生長するウバユリの花。地権者の方には、刈(か)り取ってしまわないようにお願いしているので、この先、つぼみが徐々に水平になり、花を開かせる様子を、次回の“自然のページ”でお届けできると思います。

文責 増田 克也


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