これって、鳥ですか


 「これって、鳥ですか・・・?」上の写真を編集中に、パソコンの画面をのぞき込(こ)み、耳元でつぶやいたのは、本校最年少スタッフのAさんでした。
 撮影(さつえい)した私にしてみれば、ユニークな水鳥に出会えたと、勇(いさ)んでシャッターを押しただけに、「これが鳥でなければ、一体何なのさ!」と言いたいところでしたが、改めて写真を見直すと、頭からすっぽりと頭巾(ずきん)をかぶり、斜(しゃ)に構えた出で立ちは、往年の時代劇ヒーローを思わせ、Aさんが疑問に感じたのも解らないでもありません。

 この水鳥の名前は、鞍馬天狗(くらまてんぐ)・・・ではなく、カンムリカイツブリと言います。日本には主に冬を過ごすために訪れる渡(わた)り鳥で、海岸や大きな河川に生息し、魚などを捕(と)らえて食べます。
 本校の周辺には、海や大きな河川はありませんから、まず見ることがない野鳥ですが、今回、カンムリカイツブリに出会ったのは、近くの円山川に設けられた堰(せき)で、冬にはカモたちがよく集う場所でした。おそらく北へ向けた帰郷(ききょう)の途中(とちゅう)で、羽を休めるために立ち寄ったのでしょう。

 それにしても、カンムリカイツブリはユニークな姿をしています。真正面から見た顔は、キリッとしてなかなかのものですが、後ろ姿は、頭の飾(かざ)り羽がぬいぐるみの耳のようでコミカルです。これが一度、風にあおられるとライオンヘアーに早変わり、見ているこちらを飽(あ)きさせません。

 次に、くちばしで羽繕(はづくろ)いを始めました。以外なことに、先ほどの滑稽(こっけい)な姿とは対照的で、なんともエレガントです。ひねった首の曲線美と赤茶色をした頬(ほほ)のグラデーションに目を奪(うば)われていると、急に足を伸(の)ばし、姿勢を低くしたかと思えば、いきなり頭を掻(か)きだすとは、なんとも興醒(きょうざ)めしてしまいました。

 あれやこれやと、目を楽しませてくれたカンムリカイツブリでしたが、最後に脚(あし)を交互(こうご)に繰(く)り出し、水面を走るように長い助走を見せ、東の方向へ飛び立って行きました。

 春は渡り鳥たちが移動する季節です。行くものと来るものが行き交う中で、普段(ふだん)では見られない野鳥にばったり出会えるのも、この時季ならではの醍醐味(だいごみ)です。

文責 増田 克也



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