ピンポン球とラグビーボール


 目覚める度に、辺りが白くなっている朝が幾日(いくにち)か続きました。積雪は僅(わず)かなので、除雪の苦労はありませんが、それでも田んぼや民家の屋根は雪化粧(ゆきげしょう)をします。

 そんなある日、田んぼを見て回ると、土の窪(くぼ)みに身体を伏(ふ)せ、雪の中から頭だけを出しているものがいます。頭の天辺から後ろへ向けて、チョンマゲをピンと突(つ)き出したユーモラスな姿は、この地で越冬(えっとう)する2羽のタゲリの片方です。
 そのうちに窪みから上がり、スタスタとこちらに向かって歩き出しました。白い雪の背景に映えるのは、やっぱりタゲリのシンボル、チョンマゲです。もう1羽もすぐ近くの窪みから姿を現しました。こちらはどういう訳か、チョンマゲが随分(ずいぶん)、控(ひか)え目です。

 農道では、地面が露出(ろしゅつ)した場所にカワラヒワが群れていました。こんなアスファルトが敷(し)かれた農道でも、道端(みちばた)には草が入り込(こ)んでいるので、いくらか食べ物があるのでしょう、脇目(わきめ)もふらず一心についばんでいます。その時です、群れに緊張(きんちょう)が走った次の瞬間(しゅんかん)、パッと羽音を立てて飛び出して行きました
 
 再び田んぼに目を戻(もど)せば、何やら雪の陰(かげ)から見え隠(かく)れするものがいます。頭のチョンマゲはないのでタゲリではありませんが、いったい何者でしょう。ようやく姿を現したのは、長いくちばしとピンポン球ほどの頭、そして胴体(どうたい)はラグビーボールのようなタシギでした。このピンポン球とラグビーボールには、カムフラージュの枯(か)れ草模様が施(ほどこ)されているので、雪のない田んぼや草むらなどで動かずにいると、全くと言っていいほど目に付きません。今日は雪のお陰で簡単に見つけ出すことができました。

 タゲリは、冬に越冬(えっとう)のため、当地へやって来るシギの仲間です。図鑑(ずかん)によると、くちばしの先端(せんたん)から尾羽(おばね)までの全長は約30センチ。そうするとハトと同じくらいの大きさになりますが、くちばしの分を除いたタシギの見かけは、ことのほか小さく感じます。

 思わず目を引く長いくちばしを、土の中にズイッズイッと抜(ぬ)き差ししては、虫などを捕(と)って食べますが、その動きの速いこと速いこと。「目にも留まらぬ」とはこのことです。時折、くちばしを土から上げて、くわえ直すような行動を見せる時に、くちばしの先端から口へ食べ物を送っているものと思われます。タシギの食べ物探しの様子を、動画で撮影(さつえい)しましたので、その辺りにも注目してご覧ください。

文責 増田 克也




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