ターゲットは茎の中


 上の写真をご覧ください。先ほどからシジュウカラが、忙(いそが)しく羽ばたきを繰(く)り返しています。頭を下げて苦しそうな体勢は、「どこか具合でも悪いのでは?」と心配になりますが、これにはちゃんとした理由があるのです。

 ここは、本校から3キロメートルほど西にある円山川。写真の手前に写る河川敷(かせんしき)では、数羽のシジュウカラが、枯(か)れ草をせっせと突(つつ)いています。といっても、枯れ草を食べている訳ではなく、茎(くき)の中に潜(ひそ)む虫を探しているのです。

 みなんさん、もうお分かりですね。上の写真にあるシジュウカラは、自らがとまる、細い枝の中に隠(かく)れる虫を引き出そうと、バランスを取るために羽をばたつかせながら奮闘(ふんとう)していたのです。決して体調不良などではありません。

 それではここで、シジュウカラの紹介(しょうかい)をします。シジュウカラは白い頬(ほお)と、喉(のど)から腹にかけて続く、黒いネクタイを着けたような模様が特徴(とくちょう)で、大きさはスズメほどの小鳥です。ほぼ全国の市街地から山地までの広い範囲(はんい)で見られる、大変身近な野鳥ですから、ご存じの方も多いことでしょう。
 本校でも四季を通して見られ、巣箱をよく利用し、しかも物怖(ものお)じしない性質なので、子どもたちがバードウォッチングをするには、もってこいの存在です。

 さて、河川敷のシジュウカラに話を戻(もど)しましょう。「コツコツコツ」茎を突くシジュウカラは、ものの数秒で穴を開けてしまいます。次に斜(なな)め懸垂(けんすい)でもするように枝に掴(つか)まり、くるっと上向きになってくちばしを押(お)し込(こ)み、顔を左右に振(ふ)りながら粘(ねば)り強く取り組むと・・・ほら、見事に枝の中から小さなイモムシを引き出しました

 シジュウカラは、次々に茎を突いては、高い確率で虫を取り出していきます。このことから、どこでも闇雲(やみくも)に突いているとは思えません。では、茎の中に潜む、外からは見えない虫の居場所をどのように探知しているのでしょう。虫がうごめく僅(わず)かな音を感じているのでしょうか。それとも、虫の震動(しんどう)が足に伝わるのでしょうか。もしかしたら、私たち人間が持ち得ない能力があるのかも知れません。

 気ぜわしく続くシジュウカラの虫取りに、あれこれと思いを巡(めぐ)らせている頃(ころ)、粉雪がはらはらと落ちては消える川面には、ペアのカワアイサが静かに羽を休めていました。

文責 増田 克也



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