えっ、オシッコ!

 まずは、上の画像をクリックして、チョウの下腹部に注目しながら動画をご覧ください。このチョウは、両方の前羽を広げた幅が、優に10センチ以上にもなる大きなアゲハチョウで、名前をミヤマガラスアゲハと言います。山へ出かけると、水がしみ出す登山道や、ぬかるみなどで吸水している姿を見かけることがあります。
 ところが、今回出会ったミヤマカラスアゲハは、直(じか)に沢(さわ)の中へ入り、流れに細長い口を伸(の)ばして、水を吸い上げては腹の先端(せんたん)からピューッと勢いよく排水(はいすい)しているではありませんか。

 これは一体何をしているのでしょうか。一見したときには、排水の勢いに目を奪(うば)われ「えっ、オシッコ!」と驚(おどろ)きましたが、口を水中に浸(つ)けているので「水を飲んでいるんだな」と思い直しました。しかし、せっかく飲んだ水を、まるでポンプの如(ごと)く、あれほど頻繁(ひんぱん)に排出(はいしゅつ)してしまっては、水分補給にならないのではと心配してしまいます。
 また、別の見方をするなら、体内に溜(た)まった毒素や老廃物(ろうはいぶつ)を水で洗い流す、言わばミヤマカラスアゲハ流デトックス方か。あるいは、冷たい山水を体内に循環(じゅんかん)させることで身体を冷やしているのでは? など、あれやこれやと思いは巡(めぐ)ります。

 早速、この行動の意味を調べてみると、水分やミネラルを補給しているという説がありましたが、まだ確かなことは解っていないようです。私としては、この時季だけに、体内に冷水を循環させる、ミヤマカラスアゲハ式冷却方と思いたいですね。

 「チュウチュウ吸って、ピューッと出す」涼(すず)やかで、どこかユーモラスなミヤマカラスアゲハの行動に釘付(くぎづ)けになり暫(しばら)く暑さを忘れた、山中の昼下がりでした。

文責 増田 克也

* 動画内で使用した排水時の効果音は、小森平氏 制作・著作のものです。HP「小森平の使い方」http://taira-komori.jpn.org/


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