吐き戻し与える




 7月に入って掲載(けいさい)している、アオゲラの第三報をお伝えします。前回の観察から、一週間後、ようやく時間がとれたので、アオゲラの山へ向かいました。
 1時間と少し待ったところで、このところ姿を見せなかったオスがやって来て、ヒナに給餌(きゅうじ)を始めました。前回の観察では、あれほど静かだった巣の周辺に、「ジジジジ・・・」と、昆虫(こんちゅう)のようなヒナの声が溢(あふ)れます。
 それでは、給餌の様子を動画で撮影(さつえい)しましたので、上の画像をクリックしてご覧(らん)ください。

 ここで、新たな発見がありました。なんとアオゲラは、エサを吐(は)き戻(もど)してヒナに与(あた)えています。これは大変意外なことでした。ペンギンの類やコウノトリなどは、吐き戻してヒナに与えますが、まさかアオゲラにこのような習性があるとは思いも寄りませんでした。それというのも、同じキツツキ科の、アカゲラやコゲラはくちばしにエサをくわえて巣に持ち帰るからです。

 そんなこととは知らず、前回の観察中に、何度か巣穴へ入るメスの姿を確認しましたが、そのくちばしにエサがなかったため、ヒナは孵化(ふか)していないものと推測(すいそく)していました。
 しかし、今になって考えると、先週の時点でヒナは孵化しており、メスは巣穴の中でエサを吐き戻しヒナに与えていたのでしょう。それは、既(すで)に巣穴から顔を出すほどになった、ヒナの成長ぶりをみても納得のいくところです。

 見たところ、オスが与えているものは、木の中に潜(ひそ)むカミキリムシの幼虫のようなイモムシです。吐き戻したエサは、柔(やわ)らかそうなペースト状になった栄養食で、さぞかし消化もよいことでしょう。

 では、次に下の動画をご覧ください。これはメスが給餌に来たところです。オスが巣穴の入口で、頭を出したヒナにエサを与えますが、メスは巣穴へ入っていきます。これは、どのヒナにも均等にエサを分け与えるためではないかと想像します。
 巣に戻ったメスののど元が、ヒナに与えるエサで大きく膨(ふく)らんでいるのにも注目してください。約2分間、巣に滞在(たいざい)した後、巣穴からそっと頭を出し、外の安全を確認すると一気に飛び出していきました。

 この様子では、ヒナが巣立ちを迎(むか)える日はそう遠くないはずです。その瞬間(しゅんかん)に立ち会える可能性は、極めて低いと思いますが、今後も機会を見つけて観察していこうと考えています。

文責 増田 克也





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