脇役登場!


 先週の“自然のページ”で掲載(けいさい)した、アオゲラを観察するため、山の中で長時間待機することになりました。いつ現れるとも知れない相手を待つのは、結構疲(つか)れる作業です。運良く収穫(しゅうかく)があればまだしも、全く何の気配もなく、時間だけが刻々と過ぎ、それにつれて眉間(みけん)の縦(たて)じわも増える一方です。
 「空気がうまい山の中で過ごせるのだから、まあいいか・・・」と無理矢理開き直ってみても、やはり待つことはストレスフルで「我慢(がまん)、辛抱(しんぼう)、忍耐(にんたい)」などの文字が頭に渦巻(うずま)きます。

 そんな中、希に目的外の生き物が現れ、焦(じ)れる気持ちを癒(いや)してくれることがあります。この度の観察では、本命に何度も待ちぼうけを食わされる間に、3種の野鳥が姿を見せたので紹介(しょうかい)します。

 ヒラッ、ヒラヒラッ、羽音を立てず、次々に枝から枝へ飛び移るものがいました。暗い山肌(やまはだ)を背景に、まるで昆虫(こんちゅう)が飛ぶように移動する、スズメよりも随分(ずいぶん)小さなその鳥は、上の写真にあるコサメビタキです。
 コサメビタキの羽色を表現するには、どんな言葉を使えばよいのか迷います。「渋(しぶ)い、地味、シック、落ちついた、水墨画(すいぼくが)のような」などが思いつきますが、どう贔屓目(ひいきめ)にみても、所詮(しょせん)、パッとしない色なのです。
 しかし、よく見てください。色はともあれ、身体の割りに大きくパッチリとした目がチャームポイント それは身近なスズメと比べると一目瞭然(いちもくりょうぜん)です。

 コサメビタキは、体勢を入れ替(か)え、サッと地面に降り、再び枝に戻(もど)ったそのくちばしには、コオロギのような虫を捕(と)らえています。満足そうなその表情は、眼(まなこ)を一段と大きく開かせているように感じました。

 次に現れた、一見して九官鳥のようなこの鳥は、この時季一番の歌い手、クロツグミです。山へ入るとこの鳥の美声を聞かない日はありませんが、姿は簡単に見られません。この日は、山の斜面(しゃめん)に降りて、食べ物を探す仕草を見せましたが、あっという間に飛び去って行きました。

 山の斜面から染(し)み出す水に、いきなり降り立ったのはホオジロです。水でも飲むのかと思うと、突然(とつぜん)、水浴びを始めました。通常、野鳥の水浴びは、足が立つ浅瀬(あさせ)で行いますが、これはいくら何でも浅すぎます。それでもホオジロは、水深1センチにも満たないこの水場で、顔をに傾(かし)げながら、一通り水浴びを終えました。

 結局、今回も収穫はありませんでしたが、コサメビタキたちが姿を見せ、せめてもの慰(なぐさ)めになりました。次回は「ついに主役登場!」なんてことは期待せず、どんな脇役(わきやく)に出会えるのかを楽しみに、観察に臨むことにします。

文責 増田 克也



“自然のページ”のご意見ご感想をメールでお寄せください
Email mtajimashizen@pref.hyogo.lg.jp